文化逍遥。

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わたしのレコード棚―ブルース15、Frank Stokes,Dan Sane,

2011年06月05日 | わたしのレコード棚
 フランク・ストークス(Frank Stokes)は1888年にミシッシッピ州境に近いテネシー州ホワイトヘブンの生まれだが、ミシッシッピーで育ったらしい。1955年にメンフィスで亡くなっている。レコードを残したもっとも早い世代と言えるだろう。資料によると、鍛冶屋として手に職を持っていて、その仕事の合間にソングスター的な演奏をしたり、テントショーなどで南部を回っていたようである。日本風に言えば、出稼ぎの「旅芸人」みたいな人だったらしい。
 ダン・セイン(Dan Sane)の生没年はともに不明だが、YAZOOのLP解説には1900年頃の生まれとある。ビールストリート・シークス(The Beale Street Sheiks)としてストークスのバックでリズミックなベースラインのセカンド・ギターを弾いた。

 この二人の絡みはいつ聴いても絶妙。それほど難しい事をやっているわけではないのに、高いレベルを感じさせる。ストークスの溜めの効いたラグタイム系のブルースギターと、体の奥から絞り出すようなヴォーカルも聴き応え十分。1927~'29にかけて30曲を超える録音をしているが、その頃ストークスは40歳前後だったわけで気力・体力ともに充実していたのだろう。演奏に風格のようなものが感じられる。大恐慌の後は録音の機会は無く、セインと共に街角やサーカスなどのテントショーで演奏していたらしい。


Stokes1
 YAZOOのLP1056。写真の座っている方がストークス。'27から'29年の録音14曲を収録。

Stokes2
 MATCHBOXのLP、MSE1002。これと上のLPで合わせて'27から'29年の録音33曲が聞ける。おそらく、これでほとんどの録音と思われる。'29年の録音では4曲、ストークスのバックでウィル・バッツ(Will Batts)がヴァイオリンを弾いていてカントリー調の曲になっている。バッツは、ジャック・ケリーと共にJack Kelly and His South Memphis Jug Bandで活躍した人。当時のメンフィスの音楽シーンの人脈を垣間見るような気がする。

Stokes3
 ROOTSのLP、RL-308。14曲を収録しているが、曲目は上の二枚とほとんど重複。

 ストークスの演奏はブルースのみならずヒルビリーやオールドタイムの影響も強く感じられ、言葉も豊富で、なにか聞く者の気持を愉快にさせてくれる。ギターを弾く者の一人として、音楽の歴史の上で極めて重要なミュージシャンの一人と言っておきたい。


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