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わたしのレコード棚―ブルース18、The Country Girls,

2011年06月15日 | わたしのレコード棚
 オリジン・ジャズ・ライブラリー(Origin Jazz Library)のLP、OJL-6『The Country Girls ! 1927-1935』に収録されている女性達を取り上げよう。前回紹介したメンフィス・ミニーを除いて、生没年など詳しい事はわからない人がほとんどだ。活動していたと思われる都市もよくはわからないが、おそらく各州都など中核都市のクラブを回っていたシンガーなのだろう。彼女たちはレコード産業の黎明期とも言えるこの時代に、スカウトされて一時的に録音の吹き込みの機会を与えられたと思われる。下2枚目ウルフのLP解説(ポール・オリヴァー)によると、当時カンザス・シティーだけで300を超えるナイトクラブが在ったとしている。このLPで聞けるような女性歌手が各都市には多くいたと想像される。音楽的には、初期のブルースやオールドタイム風の素朴なコード進行のものがほとんどで、ギターはほとんどが男性ギターリストが弾いている。



メンフィス・ミニーはジョー・マッコイとの'30年と'32年の2曲が入っている。その他の10人の録音データは以下のとうり。
ルシール・ボーガン(Lucille Bogan)1934年シカゴ録音。アラバマの人らしい。ギターリストは不明だが、かなりな実力者。
パール・ディクソン(Pearl Dickson)1927年ダラス録音。ギターはペット&カン(Pet and Can)の二人組。
ネリー・フロレンス(Nellie Florence)1928年アトランタ録音。12弦ギターはバーベキュー・ボブ(Barbecue Bob)の可能性あり。
メイ・グロバー(Mae Glover)1929年リッチモンド録音。12弦ギターはジョー・バード(Joe Byrd)の可能性あり。
ルル・ジャクソン(Lulu Jackson)1928年シカゴ録音。ギターは自分でストロークで弾いている。曲は有名な[Careless Love Blues]。
リリアン・ミラー(Lillian Miller)1928年リッチモンド録音。ギターはパパ・チャーリー・ヒル(Papa charlie Hill)。
ロジー・メイ・ムーア(Rosie Mae Moore)1928年メンフィス録音。ギターはイッシュマン・ブレイシー(Ishman Bracey)、マンドリンはミニーの2度目の連れ合いチャーリーマッコイらしい。
エルビー・トーマス(Elvie Thomas)1930年グラフトン録音。ギターはジョン・バード(John Byrd)らしい。下CD参照。
ジーシー・ウィリー(Geeshie Wiley)1930年グラフトン録音。ギターはジョン・バード(John Byrd)らしい。下CD参照。
ロッティー・キンブロー(Lottie Kinbrough)1928年リッチモンド録音。下のLP参照。

Lottiekimbrough
ロッティー・キンブロー(歌)とウィンストン・ホルメス(Winston Holmes歌と鳥の鳴声)の全録音を集めたウルフ・レーベルのWSE114。キンブローのギターを付けているのはマイラス?・プルイット(Milas Pruitt)という人で、ブルースと言うよりヒルビリー調のギターを弾いている。2面にフィーチャーされているホルメスは基本的にはヴォーカリストだろうが、キンブローのバックで鳥の声を入れている。江戸家猫八のように口でやっているのか、あるいは笛のようなものを使っているのか、不明である。


ドキュメントのCD5157。ブルース・ウーマンも4人入っている。CDのタイトルが『Mississippi Blues vol.1(1928-1937)』、ジャケットの写真もミシッシッピー川らしい。なので、これら4人の女性達もミシッシピーで演奏していた人たちだろうと思われるが、詳しい事はわからない。
エルビー・トーマスとジーシー・ウィリーは、'30~'31年グラフトンでの全録音を収録している。こちらのCDでは、二人とも自分でギターを弾いている、とクレジットされている。いずれにしても、トーマスの[Motherless Child Blues]はギターを弾く者にとっては注目に値する曲で、ユニゾンを効果的に使っていてブルースとしては珍しいものだ。ステファン・グロスマンの教則本『Delta Blues Guitar』にも取り上げられている。
さらにルイス・ジョンソン(Louise Jhonson、女性vo,p?)の1930年グラフトンでの4曲も収録。ウィリー・ブラウンのところで紹介したLPにも入っているが、ピアノは自ら弾いているかどうかは疑問視されていて、あるいはクリップル・クラレンス・ロフトンではないかとも言われていた。その後、この時ウィリー・ブラウンと共にグラフトンに来ていてバックで掛け声をかけていたサン・ハウスによるとジョンソンは自分でピアノを弾いていたと言っているので、どうやらピアノも弾いていたということに落ち着いた。歌もピアノもなかなかの迫力で、後のシカゴのピアニスト達を想わせるものがある。
もうひとり、マティー・ディレイニー(Mattie Delaney、歌とギター)という人が2曲入っている。1930年メンフィスでの録音。リズムの取り方が、デルタというよりジャクソンに近いような気もするが、定かではない。

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