NHKでしきりに園子温のドキュメンタリーをやっていたので、それをみて
どんな作品を出しているのか気になり、というより、そのドキュメントで紹介した
作品のカットが気になり、この『愛のむきだし』を見てみました。
主演の満島ひかりはNHKの満蒙開拓団のドラマにも出ていました。
この映画では、裏返った声の使い過ぎやコリント13章の暗唱場面が
印象的で、絶叫型の表現方法が好きな方にはたまらない物語なのでは
と思います。
でも、全体的にただ下品で本当に愛にスポットを当てたいのであれば
エロやグロでなく、誰でも受け入れやすい形で表現できるはずですし、
人間の尊厳とか崇高な意志の力とか信仰などについてもっと語って
ほしいところです。
日本の作品群がこんなみんな漫画チックな方法に行ってしまうのは
残念な感じです。
それになぜこんなだらだらと長く作らなければならないのかという
所も十分に抑制と制御ができていない完成度の低さを思わせます。
昔のアングラ映画などは潔い壊れ方とかエログロの使い方もパンチ
が効いていたのに、マンガ的な描き方に高校生の妄想に止まっている
感じすら受けます。
こいつは本当の愛というものを知っているのか、高校生が思い描いて
自慰行為する愛の姿を越えることができないのか、愛の勝利を語るに
しても敵がカルト教団ということだと宗教への理解も必要で、現実に
起きた事件など描きやすい環境があるだけに描く方向は限られている
という現実の前に発想の独自性も乏しく、カメラアングルなどがポルノ
現場が長い人の描き方という見え方がします。
デジタル化でどんな絵でも作り出せるだけに人間の持つ群像劇での
台詞の語りの力とかキャラクターが織りなすストリー展開により
映画のできることがこれからは求められている感じがします。
その一つがこんな漫画化のストーリーともいえるかもしれませんが、
実現性と信憑性という精神面に及ぼすことを考えれば簡単には肯定
できません。こういう映画に奇才とか使ってほしくない感じです。