金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

125:大宮知信 『スキャンダル戦後美術史』

2007-11-18 22:15:48 | 07 本の感想
大宮知信『スキャンダル戦後美術史 (平凡社新書)
★★★★★

わたし、はっきり言って芸術オンチです。
みんながもてはやすゴッホもモネも、
そんなに美しいか?と思っちゃうし、
岡本太郎は思想や著作物はおもしろいけど、
彼の芸術作品の価値はさっぱりわからない。
ダリもストーリーとしての彼の人生に興味はあっても
作品自体に心は動かされない。
自分がそんなふうだから、
「ゴッホのひまわり見た~!超感動した~!!」
とか無邪気に言われると、
「『ゴッホ』って名前がなくても?」
と訊き返したくなる性格の悪いわたしです。
価値がわからないのはわたしだけなのか?
「有名だから」とか「評価されてるから」というのを
取っ払っても、本当にみんな素晴らしいと思うのか?
……と結構長い間思っていたのだけど、その疑問に
ひとつの答えを示す一冊でありました。

美術関係者から一般庶民にいたるまで、
日本人の心に横たわる権威主義を軸に、
戦争画家の戦後、贋作疑惑、絵画バブル、美術館経営、
芸術大学など戦後美術界にまつわるスキャンダルと
問題点を指摘。
おもしろくて一気読み!
藤田嗣治の虚像を剥ぐ第一章がとくにおもしろい。
アメリカ軍に押収され、日本に「永久貸与」されたのち、
全面公開もされずに東京国立美術館に眠っている、
そんな大量の戦争画の存在、知っていましたか??


FC2 Blog Ranking ←はげみになります

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

124:小川洋子 『はじめての文学 小川洋子』

2007-11-16 19:16:09 | 07 本の感想
小川洋子『はじめての文学 小川洋子』(文藝春秋)
★★★★☆

【収録作品】
「冷めない紅茶」
「薬指の標本」
「ギブスを売る人」
「キリコさんの失敗」
「バックストローク」


「博士の愛した数式」「世にも美しい数学入門」しか
読んだことがなかった小川洋子。
「薬指の標本」は文庫になっているのを見て、
ホラーかスプラッタにちがいない……と
思い込んでいたのだけど、好み
詩的で美しい文章でつづられる静謐な世界。
ちょっと残酷で、エロチック。
「冷めない紅茶」と「薬指の標本」が好きでした。
結局なんだったの?という説明がなされないまま、
不思議が不思議のまま終わっていくのも、
もやもやするけど、印象的で良し。

FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

123:アレックス・シアラー 『ラベルのない缶詰をめぐる冒険』

2007-11-13 10:41:56 | 07 本の感想
アレックス・シアラー 『ラベルのない缶詰をめぐる冒険』(竹書房)
★★★☆☆

その容貌のため「頭がいい」と誤解を受けるファーガルは、
そのイメージを守るために、缶詰を集めはじめる。
スーパーの特売品のかごに入っている、ラベルのない缶を
あけると、そこにはたった一つ、金のピアス。
次に開けた缶詰にはもっと恐ろしいものが。
同じ趣味をもつシャーロットと出会ったファーガルは、
ふたりで開けた缶詰の中から「help」と書かれた紙を発見し、
シャーロットとともに缶詰工場をつきとめようとするが、
シャーロットの旅行中、ファーガルは行方不明になってしまう。

**********************************************

帯やカバーのあらすじでだいたいの見当がついてしまって、
特別おどろきもないままに読了。
勇気と友情と冒険の物語で、シャーロットがファーガルを
さがしにいくあたりはなかなかの盛り上がりなのだけど、
あっさりすぎる……というか、ちょっと都合が良すぎるんじゃ
ないかという気も。
いちかばちかの賭けで外に出したファーガルのSOSサインが
かんたんにシャーロットに届いてしまったりね。
最後のオチはおぞましくて、子どもには刺激が強いかもなあ~。

不良品ばかり出すメーカーは必然的に売れなくなって
淘汰されていくだろうし、これまでにも××の混入した缶詰を
手にした人はいたはずで、問題にならなかったのはおかしい
……と思うのだけど、つっこんじゃダメなのか。
ママも捨てて済ますんじゃなくて届け出ようよ!!


FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

122:石崎洋司ほか 『Fragile こわれもの』

2007-11-12 10:14:22 | 07 本の感想
石崎洋司ほか『Fragile―こわれもの (teens’ best selections 10)』(ポプラ社)
★★★★☆

【収録作品】
・石崎洋司「Fragile―こわれもの」
・島崎夏海「忘れ物」
・令丈ひろ子「あたしの、ボケのお姫様。」
・花形みつる「アート少女」
・石崎洋司「流星群」

児童文学作家によるアンソロジー。
自分の大切なもののために闘ったり、傷ついたりする
センシティブな少年少女たちの物語。
安心して読める、ハズレなしのアンソロでした。
4編とも舞台が横浜なのは、なにか意味があったのかな?

石崎洋司さんは前回の「チェーンメール」に続き、
ひんやりとした感触の、突き放したような文章だなあという
イメージなのだけど、青い鳥文庫で人気らしい
「黒魔女さんが通る!!」シリーズの人なのね。
いったいどれだけ作風を変えているのか、
気になるところ。
「流星群」より「Fragile―こわれもの」が好きでした。
たぶん、男の子の書き方が好みじゃないんだな。
なので男の子視点になるとイマイチに感じられる。

令丈ヒロ子さんは青い鳥文庫で人気の
「若おかみは小学生!」シリーズの人(これも未読)。
むかし、それと知らずに「料理少年Kタロー」シリーズを
読んでおりました。
「あたしの、ボケのお姫様。」はお笑いコンビを
組むことになったふたりの女の子の、明るくポップな物語。

島崎夏海さんと花形みつるさんは初めて読んだ作家さん。
「アート少女」がちょっとコミカルでおもしろかったな。
芳子の書き方がなにか取ってつけたようだったけれど。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

121:夏目♀ 『片付けられない女魂』

2007-11-02 13:38:03 | 07 本の感想
夏目♀『片付けられない女魂』(扶桑社)
★★★★☆

ブログ本を手にとったのは初めてなんじゃないだろうか……。
実はわたし、書籍化される以前からここのブログ読者でした。
汚部屋を片付けるための試行錯誤と奮闘ぶりが
おもしろいのです。

父ももうここを見ていないと思われるので書きますが、
二十年近く、思うたびにわたしの気持ちを暗くしている
人生の悩み……
それは母が度を越した「片付けられない女」であること。
夏目さんの部屋、まだきれいだよ!
汚部屋っていうか汚家、実家の半分以上は開かずの間。
まだ実家にいた6年前、新聞社の人が
「今から伺いますので部屋の写真をとらせてください」
といきなり家に来ようとしたときほど
戦慄したことはありません(全力で拒否!!)。
数年後、父は退職するはずなのですが、
四十年間懸命に働いて残されたのが、
あの汚家であると思うと涙が出そうです
お父さん、どこで生活すればいいの……?
文句を言いつつわたしがせこせこ働いているのは
父の定年前にアレをお金で解決しようとしているからです。

ううっ、書いていたらまた気分どんより……
っていうか、これ、本のレビューじゃないし。


FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

120:アガサ・クリスティ 『オリエント急行殺人事件』

2007-10-29 12:34:16 | 07 本の感想
アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件 (偕成社文庫)
★★★☆☆


大雪のために停車することになった国際列車オリエント急行。
密室となった車内で、アメリカ人富豪が殺害された。
乗り合わせ探偵ポアロは、容疑者である乗客たちを
一人一人調べることになる。
聞き取り調査の中で浮かび上がってきた、
車掌に変装した小柄で女のような声をした男、
そして赤いガウンを着たはいったい誰なのか?
乗客にはみな、他の乗客によって証言された
崩せないアリバイがあり……

*****************************

不二くん宅の本棚にあったのを読了。
ドラマの名探偵ポアロシリーズは見たけれど、
本をしては初のアガサ・クリスティ。

訳は読みやすかったし、人物描写も意外な真相も
おもしろかったのだけど……
時代背景のギャップがあるんでしょうか。
動機が美しすぎるというか、
なんだか現実味を欠いているように思えて
いまいちしっくりこない。
しかもポアロ、見逃しちゃうんだ!?

ストーリーとしては腑に落ちない点が
いくつもあったのだけど、フェイントを含めた「書き方」に
注意してもう一度読んでみたいところ。
そして次は「そして誰もいなくなった」を読んでみたい。

FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

119:赤木かん子編 『あなたのための小さな物語15 日本語ということば』

2007-10-22 13:27:32 | 07 本の感想
赤木かん子編『日本語ということば (Little Selectionsあなたのための小さな物語)』(ポプラ社)
★★★★☆

【収録作品】
橋本治「わたしの口の中のアイウエオ」
丸谷才一「ウナギ文の大研究」
千野栄一「『元祖ゴキブリラーメン』考」
鴨下信一「会話の名文Ⅱ」
久世光彦「私立向田図書館」
寺山修司「市街魔術師の肖像」
矢野誠一「桂文樂の至福の日々」
中村咲紀「『あまえる』ということについて」


日本語の発音や文法に関する論説文や、伝記、エッセイなど
日本語にまつわる種々の文章をセレクトした一冊。
言語論に関する最近の新書にはもう飽き飽きしているので、
これも大丈夫かな?と心配していたのだけれど、
おもしろかった!

中でも衝撃的だったのは、
ラストの「『あまえる』ということについて」。
これ、小学2年生の女の子が書いた「セロ弾きのゴーシュ」の
読書感想文なのです。
「小学2年生でここまでの思考力・文章力があるものなの!?」
という驚きもさることながら、
彼女が幼稚園卒園時、小学校入学時に到達した結論に、
いまの自分が及んでいないということがさらにショック!
なんかもう、泣いてしもうたよ……
39度の熱が出ても自力で薬局まで薬を買いに行き、
本当にしんどいときに誰にも「助けて」と言えない、
28歳女子のわたくしです。ううっ。


FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

118:宇田川悟 『図説 ヨーロッパ不思議博物館』

2007-10-19 08:25:29 | 07 本の感想
宇田川悟 『図説 ヨーロッパ不思議博物館 (ふくろうの本)
★★☆☆☆

トリュフ博物館にノストラダムス博物館、
偽者博物館に中世刑罰博物館、
ダンス博物館、ウィーン犯罪博物館……
ヨーロッパのちょっと変わった博物館を写真とともに
紹介する一冊。

こんな博物館もあるのね~というおもしろさはあるのだけど、
あくまでもガイドブックなので、読み物としては
いまいちおもしろみに欠ける気も。
わたしが博物館マニアじゃないからでしょうか?
自然科学系の博物館は好きだけれど、
文科系はあまり興味をそそられないのも原因だったかも。


FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

117:堀辰雄 『菜穂子・楡の家』

2007-10-17 21:51:08 | 07 本の感想
堀辰雄『菜穂子・楡の家』(新潮文庫)
★★★☆☆

「菜穂子」
母と交流のあった作家・森於菟彦をめぐって
少女時代に母と確執を生じていた菜穂子。
自分に関心のない夫と結婚し、
息子を愛する義母ともしっくりいかない日々を過ごしていたが、
病気のために家族と離れ、療養所に入ることになる。
夫や義母との関係、幼なじみの明との再会、
母にまつわる記憶に菜穂子の心は揺れ動き、
ある日突然療養所を抜け出して東京へ向かう。

「楡の家」
成長した菜穂子にあてて、母が自らの心情をしたためた日記と、
それを読んだ菜穂子による追記。

「ふるさとびと」
「菜穂子」に脇役として登場していたおようの物語。

*********************************************

やっぱりわたしは堀辰雄の文学を理解できないようです。

ほかごとを考えて仕事中も上の空、
こんな仕事はだれでもできる、
おれにはおれにしかできないことがあるはずだ、
と思っているだめんずの香りぷんぷんの都築明に失笑。
仕事中ぼんやりしている明に社長が、
「一月でも二月でも、休暇を上げるから
 田舎へ行って来てはどうだ?」
などと言い出すくだりには吹き出してしまいました。
堀辰雄は会社勤めをしたことがないのかしら??
村娘とのやりとりでも、「なんだこの男!」と
つっこみどころ満載でありました。
明のダメ男ぶりに心奪われ、主役のはずの菜穂子の印象は
あまりありません

長編の物語となるはずだった話が、この3編になったとのことで、
どうも説明不足のような感じがして、
いまいち釈然とせず、もやもやが残ります。


FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

116:千野帽子 『文藝ガーリッシュ』

2007-10-14 18:41:50 | 07 本の感想
千野帽子『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。』(河出書房新社)
★★★★☆

乙女な文学少女のための読書案内。
図書館でたまたま目について手にとってみたのだけれど、
紹介文だけですでに濃厚な世界をつくりあげております。
吉屋信子や嶽本野ばらと言えば、お察しいただけるかと。

尾崎翠、野溝七生子、森田たま、城夏子……と
名前も聞いたことのない作家から、
室生犀星、太宰治、三島由紀夫等々有名どころまで、
69の乙女本を紹介。
既読本は、

武田百合子『富士日記』
舞城王太郎『阿修羅ガール』
藤野千夜『少年と少女のポルカ』
高樹のぶ子『光抱く友よ』

のみでした。
大半は絶版で入手困難なのでは?と思われるセレクトなのだけど、
読んでみたい!と思わせる内容の紹介文。とりあえず、

綾辻行人『緋色の囁き』
太宰治『女生徒』
武田泰淳『貴族の階段』
室生犀星『蜜のあはれ』

あたりを読んでみたいです。


FC2 Blog Ranking ←ポチッとお願いします♪


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする