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★★★★☆
大学三年生のとき、群ようこの『贅沢貧乏のマリア』を貸してから
しばらくの間、わたしと友人の間では森茉莉がブームだったのだけど、
それは彼女の作品ゆえではなく、書かれている彼女の言動への
「痛さ、おかしさ」ゆえ。
当時は永遠の少女だった彼女に物悲しさも感じなかったし、
ただツッコむのが楽しかったのです。
そんな動機だったとはいえ、これがきっかけで
鴎外関連の本を読むようになったのでした。
さて、本書は森茉莉の生活ぶりを、文章の引用と
作品中に登場する料理や所持品の写真とともにつづったもの。
料理はおいしそうだったし、作品世界を壊さない良いつくりに
なっているのだけれど、実物は彼女の文章世界を超えられない、
文字列が喚起するイメージは実物をはるかにしのぐのだなあと
いうことがしみじみ感じられる。