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★★★★☆
マラソンランナー・早田俊幸を題材にしたノンフィクション。
わたしはマラソンにも駅伝にもまったく興味がなく、
登場している往年の名選手も、瀬古くらいしか知らない
(しかも名前と「はやかった」ということだけ)のだけど、
知らないからこそ?おもしろく読めた。
ただ早く走ればいいだけではない、ペース配分や駆け引きが
大きな意味を持つマラソンの世界。
スピードを抑えることができず、期待されながらも
勝負に勝つことのできなかった選手の、流転の人生の一部を
切り取った話なのだけど、結果を出せない原因の大本にあるのが
自分の性格である、というのは悲劇だなあ。
自己評価が高く、相手に原因を求め、攻撃的、人の言うことを聞かない……
読んでて「そりゃあダメだろう」と思えるけど、
わかっていても変えられないのが性格だしな……。
孤立して追い込まれて、再起を図るものの、
現実は物語のようにドラマチックではない。
そんな後味の悪さ、ほろ苦さに、読後、しんみりしてしまう。