金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

37:篠原美季 『迷宮庭園』

2018-07-26 16:32:52 | 18 本の感想
篠原美季 『迷宮庭園: 華術師 宮籠彩人の謎解き (新潮文庫nex)』(新潮文庫)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

宮籠彩人は、迷路のような庭をもつ鎌倉の旧家に
執事と二人で暮らす。
訪れる人に似合う花を選び、宴に添える花々の見立てを生業とし、
花からのメッセージを読み解く華術師の貌も持つ。
ある日、宮籠家の近所で交通事故が発生。
被害者は、前日に彩人の家を訪れた女性の夫だった。
彩人が彼女にマドンナ・リリーを選んだのは、何故?
そのメッセージは、彼女の運命を何処へ導くのか。

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うーん。

続刊が確約されていて、2巻以降で少しずつ
描いていく予定だったのかもしれないけど、
盛り盛りの設定がこの1冊だけだとまるで活かされておらず
「結局なんだったんだ」という感想しか出てこない。

「死んだ人が現れた」となったら当然オチはアレだよね。
情報を早くから出しすぎて、真相に意外性がなくなってしまった反面、
「それはもっと早く出しておくべきなのでは……?」
という情報もあって、もやもや。
そして、「宮籠彩人の謎解き」というサブタイトルを見返して、
「謎解きしたっけ……?」と首をひねったくらい、
主人公に存在感がなさすぎた。

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36:マイケル・モーパーゴ『最後のオオカミ』

2018-07-26 09:11:03 | 18 本の感想
マイケル・モーパーゴ『最後のオオカミ』(文研ブックランド)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

孫娘からパソコンの使い方を教わったマイケル・マクロードは、
インターネットで自分の家系を調べることにした。
やがて遠い親戚からメールが届き、
ひいひいひいひいひいおじいさんのロビー・マクロードが
のこしたという遺言書を見せてもらう。
それは「最後のオオカミ」と題された回想録で、
むごい戦争の時代を、ともに孤児として生きぬいた
少年とオオカミの物語だった。小学中級から。

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今年の読書感想文コンクール中学年の課題図書。

いい話だと思うし、胸を打つシーンも多々あったのだけど、
これね、小学3・4年生にはきちんと理解できないよ。

まず、「現在―過去―現在」という時系列をいじった構成が、
この歳の多くの子には把握できない。
ロビーが200年以上前に生きていた人で
もうすでに死んでいるということを
一読しただけでわかる子は少ないんじゃないだろうか……。
(「遺言」の意味も知らない子がいると思う)

あと、「ジャコバイト蜂起」を出したのもね……。
プリンス・チャーリーを出したかったのも、
ロビーの苦難に満ちた人生や、
チャーリーがたった一人の大切な存在だということを
描くためというのもわかるけど、
日本史はもちろん、世界史の知識なんてまるでない
3・4年生の子には何が起こってるのかまったくわからない。
そのため、半分くらいで挫折する子が出て来る可能性大。

前半を深堀りするのはやめて、
オオカミの子との出会い以降だけにスポットを当てれば、
共感しやすく感想文を書きやすい話だと思う。
自分とストーリー・登場人物をリンクさせて考えるのは
難しいかもしれないけど。

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35:池田まき子『クニマスは生きていた!』

2018-07-26 08:46:11 | 18 本の感想
池田まき子『クニマスは生きていた!』(汐文社)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

田沢湖は秋田県仙北市にある日本一深い湖で、
その透明度の高さから「神秘の湖」と呼ばれていた。
けれども、1940年、水力発電と農業用水のためのダム湖にするにあたって
玉川の酸性水が導入されたことにより、魚がすめない「死の湖」となり、
田沢湖にしかいなかったクニマスも姿を消してしまった。

70年後の2010年12月。
絶滅したと思われていたクニマスが、
山梨県の西湖で生き延びていたことが報道され、大きな反響を呼んだ。

クニマスはなぜ、田沢湖から500kmも離れた西湖で姿を現したのだろうか。
田沢湖の水質や自然環境を改善し、クニマスがすめるようにするために、
私たちはどうしたらいいのだろうか。

奇跡の魚・クニマスが私たちに問いかける「いのち」のメッセージとは……。


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今年の読書感想文コンクールの高学年課題図書。

田沢湖や辰子姫に個人的な思い入れがあるせいかもしれないけど、
思ったより感動的な話だった。

ただ、感動できるかどうかは、
知識量とかイメージする力の有無によるかもしれない。
というのも、多くの子どもは、
今の自分の生活や現代の感覚だけでものをとらえて考えるので、
「環境問題への意識が希薄だった時代」のことや
「国策に抗えないムード」を本当に理解できるとは思えないんだよね……。
そして、田沢湖ではいなくなってしまったクニマスが
遠く離れた湖で生き残っていたという事実を生み出したのが、
かつて行われていた「各地の湖へ卵を送る活動」だったということの
すごさも、理解できるのかな~と疑問。

しかし、「環境のためにできること」というのは
小学校の学習や活動の中に組み込まれていて
小学生には馴染み深いようなので、
「自分には~ができる、~がしたい」という形で
読書感想文の形はととのえやすいんじゃないかな。

この本ではなぜかその功績に一切触れられていないけど、
さかなクンって本当にすごい人だなあ。

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