金木犀、薔薇、白木蓮

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84:堀田善衛 『定家明月記私抄 続篇』

2018-11-07 21:43:34 | 18 本の感想
堀田善衛『定家明月記私抄 続篇』(新潮社)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

凉秋九月月方ニ幽ナリ―
平安文化の最後に大輪の花を咲かせ、
その終焉をも見とどけた藤原定家。
源平争闘の中に青春期を持った彼は、
後半生でもまた未曾有の乱世に身をおかねばならない。
和歌を通して交渉のあった源実朝の暗殺、
パトロンであり同時に最大のライヴァルでもあった後鳥羽院の、
承久の乱による隠岐配流。
定家の実像を生き生きと描きつつ、中世動乱の全容を甦らせる名著。
続篇は定家壮年期から八十歳の死まで。

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前巻と同様、読んだのは新潮社から出ていたハードカバー版の方。

続編にあたる今回は、鎌倉での血で血を洗うような粛清の嵐、
こじれていく定家と鳥羽院の関係、
承久の乱へとつながる鎌倉と朝廷の間の緊迫……と濃密。
息子が和歌ではなく蹴鞠に夢中になっているのを嘆きつつ、
(「悲シキ哉、悲シキ哉」の述懐は、
 定家が実在したことを改めて実感させる)
早々に息子に鎌倉方の嫁を迎えて経済的・政治的な安定を図ろうとする
定家のしたたかな面も。

後鳥羽院と定家の間に確執があったのは知っていたけど、
思ったよりも根深いものだった様子。
後鳥羽院が隠岐に流されて、物理的な距離に隔てられて久しかったのに
院は定家への憤懣を抱き続けていたみたい。
宮廷人としての定家のアイデンティティであったであろう
和歌の地位は、
ただでさえ連歌に押されて弱まっていたところだったのに、
その衰退が、定家と対立していた後鳥羽院の敗北によって
決定的になるのが皮肉。

それにしても、頼朝の死後の鎌倉というのは
あまりスポットライトがあてられることがないのだけど
本当に陰惨である。

視聴率取れないこと確実なのだけど、
いつか定家で大河をやってほしい!!
コメント
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