大和和紀『イシュタルの娘~小野於通伝~』
★★★★★
【Amazonの内容紹介】
「うわさにたがわぬおもしろき娘よ」と信長にも愛された娘・
小野於通(おの・おつう)。
於通を知らずして戦国は語れない!!
大和和紀が初にして待望の戦国ロマンのヒロインに抜擢したのは、
小野於通――!!
その輝きはあたかも戦国の闇を夜明けに導く明けの明星――
信長に見出され、秀吉に重用され、家康に信頼された才女、小野於通。
その知られざる生涯を大和和紀が描く本格戦国ロマン!!
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長い間積んでいたのを、旅行を機に読み始めた。
(とりあえずダウンロードしておいた1~12巻だけ)
序盤のあたりだけは一度読んだはずなのに、
ヒロインが無理やり結婚させられたパートしか記憶がない。
いや~、めっちゃ面白いじゃないか!!
オリジナルのファンタジー要素かと思っていた飯綱権現の話、
九条稙通のエピソードとして実際に伝わっているのだね。
歴史上の有名人に絡みすぎといえば絡みすぎだが、
お通が教養と才能で世を渡っていく文化人であるから、
それが不自然でない 。
実際、千利休や古田織部といった文化人が、
自分よりはるかに身分の高い人々と広く親交していた時代なので、
すんなりと受け入れられる。
お通と真田信之に関わりがあったのは知っていたが、
淀殿に仕えていたという説もあるのだな。
いろんな説をふまえて、うまく調理している。
お通があまり感情的でなく、冷静な賢い女性であるところが良い。
教養と才能でのしあがっていくヒロインというのは、
創作物でも実はあまりいないのでは。
実在の女性で表に出た人が多くなかったというのもあるけれども、
架空のヒロインでそれをやろうとしても、
作者に教養がないと難しいのだろうな
(たいしたことない部分でやたら持ち上げられる話になってしまう)。
お江与と秀忠のカップルが可愛い。
秀忠が尻に敷かれている設定はスタンダードだけど、
このお江与のキャラ立ては珍しいと思った。
しかし……
信尹、参内する時ぐらいちゃんと髻を結ってくれ!!
傾奇者時代はその髪型が設定に合っていてむしろよかったが、
ずっとこれだと「少女漫画の呪縛……」と思ってしまう。
指南書みたいなのに書いてあったのを読んだことがあるが、
女の子対象のコンテンツだと、
ヒーローの髪型が原因で特に江戸時代はウケないらしい……。
私は別に髷が好きなわけじゃないのだが、
歴史物で「それなりに身分があるのに髷を結ってない男」が
ヒーローだと興ざめなんだよ。
いま1・2巻が無料公開されているみたいなので、
興味がある人はどうぞ。