金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

270:深山くのえ『恋をし恋ひば かんなり草紙』

2022-10-18 20:00:08 | 22 本の感想
深山くのえ『恋をし恋ひば かんなり草紙』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
運命の人はかつての許婚?平安後宮ロマン!

大納言だった父と母を続けて亡くし、
他人に騙されて家の財産も失ってしまった沙羅。
親が決めていた縁談もあっさりとなかったことにされ
路頭に迷いかけた沙羅だったが、
入内した従姉妹の女房として内裏に入り、
今は幸せだった頃をときおり思い出しながら、
梅壺で静かな日々を過ごしている。
そんなある日の夜。
主が飼う猫の散歩につきあい、
月明かりの中で一人ぼんやりと庭をながめていた沙羅の前に、
宿直装束姿の男が現れる。
親しげな様子で話しかけてくるその男は、
右近少将藤原朝蔭と名乗った。
その名を聞いて衝撃を受ける沙羅。
それは忘れたくても忘れられなかった、
かつての許婚(いいなずけ)の名前だった――。
運命に翻弄され、裏切られ、過去の悲しみの中で
すべてを諦めるかのように生きてきた沙羅だったが、
強引なほど沙羅との距離を詰めようとする朝蔭の態度に、
いまさらと思いながらも、ゆっくりと心を開きはじめる。
だが、右大臣家の姫君と朝蔭の縁談が調ったという噂を、
沙羅は耳にしてしまい……。
運命の恋を描く、平安後宮ロマン!
 
****************************************
 
前に読んだ『色にや恋ひむ ひひらぎ草紙』と同じ世界。
 
「火事の中、大事な物を取りに行く」
という展開は、盛り上げるためとはいえ、
やや無理矢理感がある。
平安ものは、しっかり勉強している作者さんほど、
女性に動きを起こしにくいから、
特におとなしい人がヒロインだと
盛り上げるのが難しいのはわかるのだけどね。
 
あくまでも中心は恋。
実家が没落した姫を正室に迎えたうえ、
父親という後ろ盾を失ったら、
平安の貴族社会のシステム的に、
ヒーローの出世は絶望的じゃないか?
……と思うが、それは言わないお約束か。

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大河ドラマ「 鎌倉殿の13人」♯39

2022-10-16 22:27:02 | 22 本の感想
第39話「穏やかな一日
 
おい、何が「穏やかな一日」だ。
タイトル詐欺すぎる!!
 
 
今回の小四郎は、ただの自己中野郎。
 
・「私のすることに口出しするな」と主君に向かって面と言う
 
・和田義盛を国司につけるのは反対したのに、
 自分とこの家人を御家人にしろと言い出す
 
・要求を断られたら、年若い主君に、
 「もう何にもしてやらない。一人でやれば~?」
 
・これまでなんだかんだで献身的に協力してきた平六に
 「俺の一族の権利は手放さないけど、お前らは手放せよ。
 いいよな?」
 
これ、実朝サイドから見ても、平六サイドから見ても、
完全な悪役だろ……。
『平清盛』も終盤、主人公が闇落ちしてたけど、
あれは本当に「徐々に」といった描き方だった。
しかし、今回はいきなり。
前回までは、まだ「正しくない政をただす」という目的が明確だったが、
いきなり自分本位で権力を振るい始めた。
 
 
小四郎が悪役にジョブチェンジしたので、
今回は実朝が主人公ポジション。
泰時に結婚生活や妻のことを重ねて尋ねていたし、
彼を見つめる目の描き方から、匂わせはあったけれど、
今回で確定。
でも言葉としてはっきり「女を愛せない」的なことを言わせておらず、
制作サイドがかなり慎重に描こうとしているのは感じた。
妻とは仲が良かった様子なのに子はできず、
二十代後半になるまで側室がいた気配もなかった、
というところから、
「妻との間に性交渉がなかった」
という設定の小説はいくつか読んでいたし、
以前から匂わせもあったので、驚きはなし。
配慮を感じる描き方だったし、千世ちゃんにだけ打ち明けて、
妻との絆ができるという展開もよかった。
小四郎が北条の家人を御家人にしろと実朝にねじ込んで拒絶された、
というエピソードを、泰時への片想いと鶴丸への嫉妬と
リンクさせたのも本当に上手い。
 
泰時、
「意味もわからまま、『返歌』できないとか言っとったんか!!」
というツッコミどころはあったが、
彼も人の心がわからんわけではないのよね。
鈍感すぎて気づかずに
「歌、間違って渡してますよ」
って言ったわけじゃなく、実朝の気持ちに気づいたうえで、
相手のメンツを傷つけずに「受け入れられません」を
伝えたのであった。
気づいてなかったら、源仲章に「だれからもらった歌?」って訊かれたときに
「御所が間違えちゃったみたい」くらい言ってたよね。
一人で酒飲んでるシーンも、気づいてたからこその
苦しみのシーンだったのだろうし。
千世→実朝→泰時の一方通行の恋心が切ないよ~。
 
 
【その他いろいろ】
 
・「こんばんは、徳川家康です」形式で登場する長澤まさみ。
 
・小四郎の前では子どもを抱いてたのに、いなくなったとたん、
 侍女に子どもを預けちゃうのえ。
 「小四郎も太郎も辛気くさい」
 「私なんて欲が服着てるようなもの」
 と初にはぶっちゃけトークしてるのね。
 バレそうなものだが……。
 
・朝時、登場!
 嫁にすると嘘ついて女房をたぶらかしたあげく、
 兄の力で相手を鎌倉から追い出そうとか、 
 いいとこなしだな、お前……。
 ドラマ内では父親に義絶されなかったみたい。
 
・藤原定家出た!!(名前だけ)
 
・また仲章にいじめられた三善殿を慰める実朝、
 優しい。
 
・八田殿も、小四郎には頭来てるんやな。
 
・大江殿、今日も黒いですな~。
 
・さすがに平六も小四郎に怒り心頭。
 本当に、今まで一方的に友情を搾取されてたようなもんだもんな。
 
・4年間を45分でダイジェストにしてるからというのもあるが、
 実朝の成長をしっかり描いてる。
 鶴丸への嫉妬に駆られいたとはいえ、ちゃんと小四郎の非を衝いたし、
 脅しに屈したとはいえ今後のことを考えて
 折れるだけの冷静さも持ち合わせてる。
コメント (2)
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映画:『9人の翻訳家 囚われたベストセラー 』

2022-10-15 13:45:38 | 映画の感想
2022年の映画③『9人の翻訳家 囚われたベストセラー 』(レジス・ロワンサル監督)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

フランスの人里離れた村にある洋館。
全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の
各国同時出版のため、9ヵ国の翻訳者が集められた。
外部との接触は一切禁止され、日々原稿を翻訳する。
しかしある夜、出版社社長の元に
「冒頭10ページを流出させた。500万ユーロ支払わなければ
全ページが流出する」
という脅迫メールが届く――。

*******************************************

Amazn primeで視聴。
長いこと視聴リストに入ったままになっていたのだけど、
プロジェクターを購入したのを機に、視聴。

「犯人は誰か」
「犯人はどうやって、密室から原稿を流出させたのか」
という謎を追っていくのかと思いきや、実は……
というどんでん返し的な展開がいくつか仕込まれている。
意外性を楽しめるところもあれば、そうでないところもあり。
「そこまでするか?」
「そうする必要性はなくない?」
という動機や必然性に対する疑問が気になって
いまいちのめり込めなかったのだけど
(巻き込まれて死んだ人たちが可哀想)、
動機よりも構造を重視して見る人には楽しめるのではないかな。


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257-269:石田スイ『東京喰種トーキョーグール〈1〉~〈14〉』

2022-10-09 18:24:21 | 22 本の感想
石田スイ『東京喰種トーキョーグール〈1〉~〈14〉』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
“東京”には、或るひとつの「絶望」が潜む…。
群衆に紛れ、人間を狩り、その死肉を喰す怪人、
人はそれを「喰種(グール)」と呼ぶ。
青年が怪人に邂逅したとき、数奇な運命が廻り始める──!
 
****************************************
 
「人間サイドの主人公だと思ってた人が死んじゃった、
これからどうするの!?」
 
と思っていたら、
 
「え、これで終わり!?!? 正気か!?!?」
 
後で調べたところ、どうやら新編もあるようで、やや安心。
 
普通の人だった主人公が、ひょんなことから
大きな力を手に入れ……という導入は、
少年漫画でよく見かけるものだけれども、
「人間を食べる側」になってしまうというのが
他にはないドラマをもたらしていたように思う。
「これだけ出せば、誰かひとりお気に召す奴がいるでしょ!」
というジャンプ商法でキャラクターがどんどん出てくる。
この漫画、タイトルしか知らなかったんだけど、
有馬さんとか絶対人気キャラじゃん……とわかる
ツボの押えよう。
 
 
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256:深山くのえ『色にや恋ひむ ひひらぎ草紙』

2022-10-09 17:58:11 | 22 本の感想
深山くのえ『色にや恋ひむ ひひらぎ草紙』
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

後宮で複雑に絡み合う恋を描いた平安恋草紙。

同じ屋敷に暮らす妹に婚約者を奪われてしまった淑子。
公卿である父親が勝手に決めた相手だったとはいえ、
妹は恋の勝者と勝ち誇り、
女房たちは腫れ物に触るような態度をとってくる。
厄介な状況に疲れ果てた淑子は、家を出て、
典侍として後宮で働こうと決めた。
そして月日がたち――生真面目な淑子は、
愛嬌がなくて刺々しい『柊の典侍』だと煙たがられながらも、
いまや後宮を仕切る立派な典侍に成長。
女同士の争いが日常茶飯事な後宮で、
揉め事解決になくてはならない存在になっていた。
ある日、典侍として仕事上のやりとりが多い五位の蔵人に、
二人の新任者がやってくる。
そのうちの一人が妹の夫となった元婚約者だと知り、
憂鬱になる淑子。
彼と顔を合わせないようにと願いながら蔵人所に向かった淑子は、
もう一人の新しい蔵人、源誠明と対面する。
誠明は、東宮の嫡子でありながら臣籍降下した人物。
宮中では難しい立場の誠明だが、
なぜか淑子のことをよく知っている様子。
そのうえ、誠明は唐突な言葉を淑子に告げた。
私と、結婚してください――。
後宮を舞台に複雑に絡みあう恋を描く、深山くのえの平安恋草紙!

****************************************

初めての作家さん。
少女小説のレーベルにいた方なのね。

しっかり勉強して書いているのがわかるし、
政争にまつわる設定も作り込んである
(モデルはあのあたりの時代かな~と考える楽しみも)。
特に夏実周辺の会話が現代寄りすぎて
そこがもったいないなあと思うのだけど、
仕事のできるヒロインと、実直なヒーローの
キャラクターも好ましく、楽しめた。

政争にまつわる作り込みがしっかりしている割に
そこが本筋にはあまり絡んでいなくてもったいないと
思っていたのだけども、
どうやらシリーズものであるらしいので、
他の作品を読むのが楽しみ。

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大河ドラマ「 鎌倉殿の13人」♯38

2022-10-02 22:26:15 | 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
第38話「時を継ぐ者

新章に入る前の、よい区切りの回だったなあ。
どの登場人物も、「らしさ」がちゃんと出ていて。
時政からの伝言を頼もしい返事とともに預かり、
あっという間に忘れてしまう和田義盛とか、
暗殺者トウにひけを取らないばかりか
圧倒するほどの強さを見せながら、言った台詞が
「俺の女になれ」な平六とか。
敵対していた義理の娘たちに
みじめな姿を見せてなるものかと、
めかし込んで迎えたりくさんもよかったね。
負けん気の強さとプライド、ポジティブさ。
彼女のそういうところが、確かに政子に
よい影響を与えていた時期もあったのだった。
「あの人のみすぼらしい姿を見たくない」という
実衣ちゃんの発言、
この義理の母子関係をよく表していた。

りくさん、もともとの強欲さと、
息子を失った悲しみによる視野狭窄ぶりが、
結果として多くの人を死に追いやっていて
(全成と重忠なんか、完全にとばっちりだったし)、
政子と実衣との和やかな別れのシーンには
モヤモヤしてしまった。
もちろん、政子たちもすべてを水に流したわけじゃなく、
二度と会えないかもしれないという状況での
礼儀もあったのだろうけど、やっぱりモヤモヤ。
だから、小四郎がトウを差し向けて、
きっちりりくを始末しようとしたの、
本当によかったよ。
全成や重忠の無念、彼だけはちゃんと忘れずに
落とし前をつけようとしたのだった。
のえと平六に邪魔されて、
結果として暗殺は失敗するんだけど、
りくさんのその悪運の強さも、
自分を殺そうとした義理の息子に発破をかけるところも、
本当に「らしい」。
歳の離れた夫を利用しているだけじゃなくて、
時政を救うために頭を下げるだけの愛もあるところが、
憎みきれない理由の一つなんだよな~。

これまで時政や政子のことは認識していても、
小四郎の存在自体を知らなかったであろう後鳥羽院が、
ついに小四郎の存在を認識。
鎌倉vs朝廷の方向性も示されて、
最終章の前振りもきっちり行われて終了。
来週はお休みか~。

【その他いろいろ】

・義盛「書いちゃえばいいじゃん、起請文。
    後で破っちゃえばいいんだから」
 実朝「誓いを破ったら血を吹き出して死ぬ」(可愛い)
 義盛「そんな死に方した奴聞いたことないよ」
 意外にリアリストだった、義盛くん。

・実朝、監禁されたり刀で脅されたりしても
 動揺してない。
 義盛に「武衛」の意味を説明してあげる顔も
 にこやかで穏やかでキュンとしたわ~。
 短期間で、着実に彼が成長しているところを
 しっかり描いてる。

・戻ってきた実朝に抱きつく千世ちゃんと、
 それに戸惑う実朝。
 千世ちゃんみたいな真正お嬢様は大好きだし、
 「末永く幸せでいてくれ、この夫婦……」
 と祈りたい気分。
 そうならんことは知っているが……

・小四郎は、泰時に対して言葉が足りなさすぎなんだよね。
 そりゃ反抗期になるわ。
 妻に、いつも父親や義理の母についての
 愚痴を言ったり相談したりする泰時と、
 異常に義父に対する理解度が高いクールな初ちゃん。
 この夫婦も可愛いね。
 初が泰時のこと「あんた」って呼んでたの、
 幼なじみならではの距離感。
 初のこと、最初嫌な女だなと思ったけど、
 なんだかんだで彼女も北条に献身的だよ……。

・今日は八田殿が大活躍だったな。
 というか、もう、文官以外で中枢にいるのが
 小四郎と彼だけなのだった。

・「方々、どうか父をお許しください」
 と土下座した政子にちょっと泣いちゃった……。

・今日の二階堂殿、強硬派だな。

・うぐいすの話はよくわからなかった。
 何の比喩なの?

・平賀朝雅、執権の座は狙ったけど、
 確かに「鎌倉殿」になろうとはしてないんだよ。

・サクラ役を買って出て小四郎への疑惑を潰した平六、
 マジでなんなの、その献身ぶりはさ~!!!

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