医師1年目、麻酔の研修中、意識のある腰椎麻酔の患者さんを受け持ちました。手術開始5分後、患者さんは「何か気持ち悪い。息苦しい」といい始め、血圧を測ったら80mmHgと低下しており昇圧剤を静注しました。ところがなおも血圧は下がり始め、しだいに意識はなくなり、心停止寸前にようやく上の先生がきて気管内挿管などをして事なきをえました。身体全体は真っ赤に蕁麻疹様の紅斑と皮疹が出現しており、顔も喉もパンパンにむくんでいました。あと少し気管内挿管が遅れたら窒息死するところでした。原因は点滴に混ぜていた止血剤によるアナフィラキシーでした。アナフィラキシーの原因は基本的に何でもあります。
でもあれ以来、本当に「死にそうな」アナフィラキシーにはお目にかかっていません。救命センター勤務時代に「アナフィラキシーショックだから転送する」という他院からの診療依頼で重症であったためしは一度もありません。重症なものほど転送する暇などなく、あっというまにその場で急変しますから。