昔読んだ小説で「桜の森の満開の下」というものがあった。なんとなく違和感を覚えながらも納得する部分も多かった。作者坂口安吾がこのような発想をしたのは、どこかでこのような事実を体験したのだろう。この小説をよんでからは、桜の下での花見はまだよいとしても、宴会でもしたら何か起こるのではないかと理由のない不安感を自分は感じるのである。一説によると東京大空襲の時に上野の山で多くの傷者の遺体が焼かれたそうである。坂口安吾の時代背景と合致するかどうかは知らないが、その時上の桜が満開だったという現場を目撃したらしいというのだ。医局の花見宴会は上野ではなくいつも谷中ではあったが、やはり近場である。桜はきれいであるがその下での宴会はやはり落ち着かないのである。桜に対する感情はひとそれぞれである。「きれいで華やかで同時にどこか儚く寂しい感じがする」という感覚はまだ一般的である。自分はその中にではあるが「わずかに不気味にもみえる」という感覚も垣間見えるのである。
年が明けたと思ったらもう桜が咲いて散り始めている。この3月は寒い日や夏日が混在してどうもへんな気候である。4月からは入学式のシーズンであるが今年は「桜の満開のトンネルをくぐって入学式」などという光景はなさそうである。入学式の思い出に桜が出てこないのは将来の思い出には残念であるが、まあ語り草になっていいのかもしれない。さて自分も大学時代には時に医局主催の花見にでかけたものである。なんのことはないただうす寒い中での「外飲み会」である。若い頃はそうでもなかったが、後年はこの寒さとイモ洗いの人ごみの中での飲酒で翌日は必ず喉をやられて風邪を引いた。だからほとんどこの夜の花見宴会には参加しなかった。もともとあまりイモ洗いの中でのドンチャン騒ぎは好きではなく、また桜の下での宴会もなんとなく自分の好みではないかったのである。
フツーなら先日のトラブルを詫びる前振りをするであろうがそれはないのである。まったく学習していないのか、あるいは毎日ものすごい人数に電話をしているのでいちいちマナーなど守っていられないのか・・・? はたまた目の前の台本を機械的に棒読みしているだけなのかもしれない。予備校の模擬試験の点数でどのレベルの大学に合格するかというのはその予備校にとって極めて重要な情報である。電話先の相手に失礼であろうと不快な思いをさせようともそんなことよりその情報さえ取れればいいのである・・と思っているのかもしれない。息子が大学に受かってしまえば、もう二度と息子はその予備校の「顧客」にはなりえないのでこんなマナーなんかは関係ない・・・と思っているのかもしれない。実は数十年前、医学部浪人中、自分はこの予備校に通っていた。当時は「親身の指導」というスローガンであった。残念である。
昨日昼間に、またその予備校から電話があった。声色からすると前にかけてきた若い女性のようである。喋り方も「わたくし・・・○○予備校の△△です・・・。今回・・お忙しいところ・・・お電話させていただきましたのは・・、当予備校模擬試験を受けていただきました息子さんの・・・」と極めて冗長なので間違いはない。向こうの用件は分かっているがこちらも「あぁ、はぁ、はぁ」と相槌をうたざるをえずこちらの話を挟みこむ余地がない。最後に「・・・で○○さん(息子の名前)はご在宅でいらっしゃいますか?」とようやく本題を告げた。この前、「それなら最初から息子にかけなおしますと言えばいいでしょ」と嫌味をいったことを覚えていないようである。通常ならすぐに気がついて「あっ、この前のお父様でいらっしゃいますね? 先日は大変失礼いたしました。で○○さん(息子)は本日はご在宅でしょうか?」とフツーなら言うはずである。
「分かる範囲でいいから話を聞きたい」といったのは向こうである。でもこちらは仕事がはじまるから「手短に」ともお願いした。それにもかかわらず冗長に質問を続けた挙句、私の答えた内容では満足できないので息子に後でかけなおすと言うのである。こちらは仕事をうっちゃって対応したのであるが、その対応した時間は一体なんであったのだろうか。「分かる範囲」ではだめなら、最初から質問する前に「では息子さんに直接あとでお電話いたします」と言ってすぐ電話を切ればいいのである。若い女性の担当者のようであったが、少々むっとしたので「私でもいいというので仕事を中断してまで対応したのに、最後には私の回答ではだめと言うのは失礼ではないですか?」と嫌味をいった。平身低頭していたがたぶん携帯電話世代であろう、おそらく電話を切った後で「ちょっと今の家のオヤジったら感じ悪いわよー」と言っているに違いない。・・ったく、最近は電話マナーというものの概念が変ってきたのかもしれないが。
せんだって、昼休みの時間に、息子が模擬試験を受けたことのある予備校から息子へ電話があった。息子は不在だったのでその旨をつたえたが「分かる範囲でいいので質問にお答え下さい」と言われた。すでに午後の診療がはじまる時間である。「手短にしてください」とお願いして質問を受けた。その内容は息子が受けた大学と、その合否の結果を知りたいそうである。たぶん模擬試験の点数でどこの大学が合格するのかのデータを蓄積したいのであろう。なので取り急ぎ受験した大学と合否を伝えた。手短にとお願いしたのであるが、なおもジクジク聞いてくる。少しこちらもイライラしてきた。先方は時間の経過に無頓着のようである。なんだか相手は自分の仕事を完遂すれば相手の事情はお構いないのかもしれない。息子の受けた学部はどこの大学のどこの学部だったかまでは詳細を覚えていなかった。「ちょっと学部までは確実には覚えていないんですけど」と言ったら、「あーそれでは情報がたりないので、あとでまた息子さんにかけなおしますね」と言われたのでカチンときた。
クリントン大統領時代のヒラリー・クリントンが保険行政に携わっていた。そのころの彼女のコメントであるが「日本の医療の皆保険制度は米国も見習うべきである」といっていた。米国の医療はとにかく高い。保険料が払えない市民も多く、受けられる医療サービスにはかなりの格差がみられている。日本では国民会保険制度のおかげで、とりあえずは日本全国どこでも均一的な医療が受けられるのである。これは世界レベルからみると「ものすごいこと」なのである。TPP参加でおそらくはこの規制がすべて取っ払われることになり海外からあらゆる価格のあらゆる医療レベルのものが入り込んでくることになる。もしかしたら国内の医療は戦国時代に突入して、今以上に保険医療機関が潰れて医療の質が保てなくなるのかもしれない。まあそうなったら怖いが、そうなったらそうなったでなんとかしないと・・・。でもクリントンが「日本を見習うべき」といっていたが、結局は黒船のように米国方式のごり押しになる可能性もある。さてどうなることやら・・・。
春先の気候は高気圧と低気圧が頻回かつ交互にやってくるそうである。この気圧の境目で突風が吹き荒れ、高気圧と低気圧のせめぎあいで気圧が行ったりきたりし、寒いがあったと思ったら翌日は夏日になっているそうだ。身体に変調をきたすのは気温の上下のみならず、気圧が急激に変動するせいかもしれない。なんとなくこんな時は不安になり精神的にも落ち着きがなくなる。このようなときに体調不良を訴えるのもうなずけるのである。「桜の花の満開の下」とい小説があったが春の桜とlunaticな関連を示しているのかもしれない。しかしながら自分個人的には4月は新年度であるため、あらたなる仕事への第一歩という感覚になる。しかし気になるのはこのような季節的な精神的変動よりも、このたび首相のTPP参加表明のほうが不安になる。農産物ばかりTVでとりあげられているが、TPP参加で医療の国民皆保険制度が根本から覆るであろうことは想像にかたくない。これは極めて不安である。
なんとか自分の代になってから潰れずに6年目の春を迎えることができた。毎年「ああ今年も無事に春を迎えることができた」と気持ちが新たになる。普通は正月に新年を迎えて刷新した気持ちになるのであろうがインフルエンザやウイルス性胃腸炎でてんてこ舞いしているので年始はただ慌しく感じるだけである。それにしても今年の春はなんか気候がおかしいかも? 前倒しで桜が咲いてしまったり、突風が吹き荒れたり、とんでもなく寒い日の翌日に夏日になったりで落ち着かない。自分はあまり花粉症はひどくないので、いつも春先の気候が好きであった。しかし今年は随分と落ち着かない気候のようである。昔、研修医の頃、上の先生から言われたが「春先から木の芽時にかけては自殺企図者が多いんだ」と言われたことが頭に残っている。その理由を聞いたが「木の芽が出る頃は人間もムズムズするんだろう?」とうまくかわされてしまった。でも何となくいまになって理解できるようになった。
うちでも確か以前、順番を間違えて(本当は間違えていないのだが)診療してしまったことがあった。その患者さんは過去2回ぐらいきたことのある人であった。診察室に入るなり「先生、順番が違いますよ、私のほうが先でした」と。きっと検査か処置か何かをはさんだので診療の順番が前後したのだろう。でも理由などはその人にとってはどうでもいいのだ。順番が前後したことが「妥当であり納得できる」かが重要なのである。あとからの説明では何をいっても納得されるはずがない。こちらの「言い訳」ととられる。前もって受け付けできちんと説明し納得いただいていなかったことがいけないのだ。とにかく平身低頭で謝った。でもあれから数年以上たつがその患者さんは二度と来院されていない。患者さんの評価は厳しい・・。そうなのであるクリニックだってサービス業なのである。今回、一般店での接遇をみるにつけ「あ うちでも改善しなくては」と我に返った。もって自身を律することが必要である。患者さんからの評価点は診療の内容ではないのである・・・。
どだい客待ちの列の管理は店側の責任である。きちんと列のコントロールをせずにレジ前の人だかりをカオスのままにしておくのは言語道断である。本来であれば「テイクアウトお待ちのお客様は壁際によってお待ちください。まだご注文いただいていないお客様はレジ前で二列になってお待ちくださるようご協力お願いいたします」とかなんとか言えばいいのだ。最近ではラーメン店ですら(「ですら」と表現したら怒られそうであるが)、細麺、太麺などの種類によって茹で上がりの時間が異なるので「注文の品によってお出しする順番が異なりますことをご了承ください」と客に説明し、順番が前後することに細心の注意を払っているのである。Mバーガーはアメリカナイズされているはずである。こんな待ち客のコントロールなどマニュアルに記載されているはずである。管理業務では初歩中の初歩と思うのだが、この店はそんなことまったく無頓着である。・・・といいつつうちのクリニックのことを思い出した。
ある日曜日の朝、本当に久しぶりにジョギングにいった。帰りがけにMバーガーの店によってテイクアウトしようとした。ところが店は日曜の朝のためか注文カウンターの前は無秩序に人だかりで溢れていた。どこが注文の列の最後なのかまったく分からなかった。よくみると品物ができあがるのを待っている人と注文するのを待っている人が混在しているようである。ごちゃごちゃのカオス状態であり、注文の列はあるようで、なさそうにも見える。しばらくカオスの外側で何となく順番をの最後を探していたところ後ろから来た3~4人の一群がいきなり前に入り込んできた。レジのところの店員は「はぁ~い、お次の方どうぞ」と声を掛けてそれら一群の注文をとり始めたのである。完全に私は抜かれたのである。少々ムッとして「えぇ、もう来ませんから」と思いながら、そのまま店を出た。ランパンランシャツ姿はこのカオスでも浮いているので店員の目に留まらぬわけはない。通常なら「あちらのお客様が最初ですので少々お待ちください」とその一群を制するのが常識である。
このようないいかげんな対応を反面教師にして、うちのクリニックも見直さなくてはならない。店(クリニック)に通うのは味(診療内容)だけで判断されるのではない。おそらくその半分以上の要因はアメニティであったりサービスであったり居心地などが占めるのであろう。特にクリニックは高齢の方も多い。なかなか冗長で何をおっしゃりたいのかよくわからない方もいる。またクリニックに何を求めているのか個人個人異なるのである。薬だけ出してくれればいいという患者さんもいるし、かかりつけ医になってほしいという患者さんもいる。またいつも通院する医療機関が休みなので今日だけ来たという人もいる。あるいはいつも通院している大学病院での投薬や治療内容をうちに提示して、「これは何? きちんと説明してくれ」と的外れな希望をする患者さんもいる。本当にさまざまなのである。それぞれが応用問題を解くようで難しい。とにかくすぐには「案内」できないのに「すぐご案内できます」というようないいかげんな応対だけはしないようにしたい。
私も馬鹿である。二度とそんな店いかなきゃいいのに、また認定会議の前に行ってしまった。この前と同じように「奥の席、空いてる?」と聞いたら、やはり店員の判で押したような返事である。「そこで食券を買ってください。すぐご案内できます」と。はは~ん、この店員は店内の状況を把握しないで返答しているなと感じた。返事はすべて画一的で一緒なのである。こちらも今日こそ時間が押している。思わず強めに言ってしまった。「いやっ、時間がないので奥の席は空いているの? それとも空いてないの?」 店員はポカンとしながら「えっ? あっ、え~と(と言いながらようやく確認して)あっ、い 今、満席です・・・」と答えた。「あ じゃあ結構です」と私は店を出た。それでいいのだ。いいかげんなこと言わずに最初からきちんとそう言えばいいのである。きちんと正直に対応すれば好感度もあがるので「また行こう」ということになる。こんないい加減な対応では信用をなくす。しかしながらもう二度と行くもんかと思いつつも、あれから毎回通っている自分も情けない・・・(笑)。
「空いているか?」の問いの答えが「すぐご案内できます」ならば当然空席があるものと解釈するのが妥当である。ところが食券を買って奥まで行ったら席は満席であった。「えーなんだよー話が違うじゃないか」と思いつつも10数分待たされ着席し慌ててかき込んで会議に向かった。少し遅刻した。「すぐご案内できます」という店員の言葉は、「待ち時間なし」ではなく「10数分」を意味していたのである。店員の深層心理には「うちは繁盛店だから待つのが当たり前。10分程度の待ち時間は『すぐご案内』の部類だ」と思っているのだろう。あるいは一人でも客を逃がさないために「すぐご案内できます」とぼかして、まず先に食券を買わしてしまうのが手口かもしれない。いずれにせよ「空いているか?」の問いには「ただいま満席で少々お時間を頂きますが」と対応するのが正しいのである。