吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

奈良のY病院事件その4

2010年02月26日 07時05分57秒 | インポート

 昨日のニュースに驚いた。この事件を取り上げていた矢先であるが、なんと昨日の朝(2月25日)、地元の警察署に拘留中の元主治医が頓死したというのだ。今回、逮捕されたのは元院長と元主治医の2人であるが、これで事件の成り行きは随分変わってくる可能性がある。おそらくはすべて取調べが終了したわけではないと思われるので、いくつかの事実は永遠に薮の中のままの可能性がある。それにしても元主治医は54歳と若い。連日の取調べや慣れない環境の中で体調を崩していたらしいが、しかし突然の死とは何か因縁めいている(と思うのは私だけであろうか?)。


奈良のY病院事件その3

2010年02月25日 06時47分11秒 | インポート

 現在、調査中でもあり、あえて今回の事件についてはコメントしない。しかもマスメディアを通してのみの情報であるから、それでは正当な評価はできるわけはない。ただこれでまた市民における医療不信が増大するのは間違いない。特に患者さんは予期せずに急変し重態となることが時々ある。またあるいは治療中において起こりうる合併症を併発する場合もある。このような急変に陥った場合は、患者さんの家族は、「すわ!医療過誤?」と思い、今後トラブルになるケースが増えるであろうと懸念している。中には「何かあったらすぐに責任追及しよう」と最初から構えてくる家族もいるようである。幸い自分はまだこんなクレーマーにあたったことはないが、もし当たったら交通事故である(こちらが)。(泣)


奈良のY病院事件その2

2010年02月24日 06時50分26秒 | インポート

 ここで危惧しているのは、おそらくこれを期に世の中の専門医指向がまた一段と偏向的に拡大していくかもしれないということである。以前の勤務先である救命センターもしかり、開業してからは尚更であるが、自分は「何でも屋」である。地域でのかかりつけ医に求められているものはごく狭い範囲の「専門店」よりも、幅広く何でも売っている「よろず屋」なのである。ところが一度このような出来事があると世の中の流れは過剰に反応し「とにかく何が何でも全部専門医」という価値観になりやすい。もちろんうちのようなクリニックでは肝臓手術などはしないが、専門的処方や処置や小手術などは常にある。 たぶんこの時に「専門医ですか?」とは聞かれることはないと思うが、今回の事件がうちの患者さんに疑問や不安を少しでも抱かせるような誘因にならなければいいと危惧しているのである。


奈良のY病院事件その1

2010年02月23日 06時53分08秒 | インポート

 最近、以下のような事件があった。某病院で肝臓の良性腫瘍を切除の要がないと知りながら手術を決め、執刀医は経験したことのない肝臓手術を輸血も準備しないで行い、術中出血を止血しないまま閉腹し、術後はすぐ院外へ飲酒にでかけ、病状悪化による病院からのコールにも応答しなかった。で・・・患者は死亡したとのこと。これにより執刀医師は逮捕されている。この逮捕が不当か正当かのコメントはあえて差し控える。ただ「経験したことのない肝臓手術を行なったこと」については言語道断だが、一般的に経験とは積み重ねである。もちろん最初からみんな腕がいいわけではない。


唖然 その10

2010年02月22日 06時55分33秒 | インポート

 その後、その芸能人は病院へ行って服薬したり生活習慣を改善させたと聞いてホッとしたが、バラエティであっても医師としての自分の立場はわきまえたほうがいい。立ち位置の基本は「正確な医学情報の提供」であると今でも思っている。正直、何が怖いかといったら、それは「同業者の目」である。以前、新聞のコメントに少し自分でもあやふやと思われる中途半端なコメントを出したら、後輩からの年賀状で「あまり、いいかげんなコメントは気をつけてくださいね」と指摘されてしまった。恥ずかしい限りである。ま でも今回のエピネフリンの自己注射のような明らかな認識不足ではなかったので許してもらえるかなぁ?? いやはや、しかしながら勉強不足の医師があまりバラエティに出るのも要注意である。 あれ? それは自分のことか(笑)?


唖然 その9

2010年02月20日 06時32分58秒 | インポート

 打ち合わせのときに、その芸能人のデータをみると、重度の高脂血症、肝機能障害、耐糖能異常などがあり、すぐに治療しないと近い将来、危ないぞという所見だった。スタッフに「この人すぐに病院いって治療したほうがいいですよ」とつげたが、「そうですか・・・、ま でも今回の放映テーマとは異なりますので、また次の機会にでも、ということで・・」と軽くいなされてしまった。そうである。別に彼らスタッフには健康を守るという大儀はないのである。彼らの大儀は今回の放映テーマをきちんと遂行し視聴率がとれればそれでいいのである。


唖然 その8

2010年02月19日 06時56分58秒 | インポート

 バラエティ番組は基本的には「お笑い」であるため視聴率をとらなければならない。「健康増進」の啓蒙ということは二の次なのだと分かった。それはそれでもちろんしかたがない。だからバラエティ番組では笑いの取れるコメントはしたほうがいいに決まっている。でも自分達は芸人ではなく医師であるので、自分の立ち位置である「医学」の土台をぶれないようにしておかないと、コメント自体に信用がなくなり、それに基づく笑い作りも胡散臭くなる。以前、健康をテーマにしたバラエティ番組に出演した時は、出演者の採血データをみて番組を進めていくという筋書きであった。そして某芸能人のデータをみると・・・ えっ?


唖然 その7

2010年02月18日 07時15分20秒 | インポート

 しかしながらマスメディアに出るには、医師はそれなりの覚悟が必要である。TV出演は録画さえ撮らなければ一瞬~短時間のことで永続性はない。しかし新聞へのコメントは記録として残ってしまうので、何かの折に「〇月〇日付の〇〇新聞の記事で・・・」といった具合に永続的に引き合いに出される可能性がある。どちらも勉強不足でマスメディアにでるのは怖い。きっとあのTV番組に出て認識不足のコメントをした医師は今頃、恥ずかしい思いをしているだろう。過去、自分も新聞のインタビューで記事に載ったこともあるし、TV報道番組でコメントしたこともあるし、バラエティに出たこともある。しかしなかでも一番やっかいなのはバラエティである。


唖然 その6

2010年02月17日 06時40分53秒 | インポート
 エピペンの処方は登録医の外来に行って、診察を受け処方してもらうことになる。もちろんうちは登録医である。そして使用したなら登録医へ報告する。打つ部位は太ももの外側であるが、もちろん消毒はいらないし服の上からでもよい。1秒を争うほど緊急性が高い状態なので急いで確実に行うことが重要である。それにしてもバラエティ番組の功罪は様々である。基本的な放送姿勢では笑いが取れればそれでいいのであろうが、最低限、事実と異なることだけは伝えないでほしいものである。バラエティ番組の存在範囲の線引きは難しい。



唖然 その5

2010年02月16日 06時42分12秒 | インポート

 昔、海岸そばの救命センターに勤務していた時、「背黒いわしの刺身」のアナフィラキシーショックを診た。すでに現場で心肺停止であり救命できなかった。これこそ現場で本人がエピネフリンを注射しない限り助からないだろう(もちろん注射してもダメな場合はいくらであろうが)。したがってこのエピペンの発売は画期的であり、重度アレルギーを既往にもつ方にはぜひとも携行が勧められるのである。昔、心肺蘇生・応急手当の指導員(BLSインストラクター)として指導していた時に、エピペンもカリキュラムに入っていたのでよく実技指導した。しかし「日本ではまだ認められていないんですけどね」と注釈をその都度つけなければならなかったのは机上の空論的で虚しかった。


唖然 その4

2010年02月15日 06時37分08秒 | インポート

 アナフィラキシーショックというのはアレルギー反応でも特に発現が早く重篤になりやすい。例えば原因としてソバやハチ毒やナッツ類は有名であるが、これらの症状出現が早いものほど重症になりやすいといえる。逆に結果的に病院にくるまで時間的余裕のあったものは軽症ともいえるし、重症なものほど現場で死亡する可能性は高い。ハチアレルギーを持つ営林署の職員さんなどは山の中での作業中にさされた場合、病院にいくまで時間的余裕がないので現場でなんとかしないといけないわけである。


唖然 その3

2010年02月13日 06時49分38秒 | インポート

 ところが・・・である。な、ななんと、そのバラエティ番組に出てきたコメンテーターの医師は「あ~この注射はステロイドですね・・。これは即効性がなく副作用も多いので、あまりこれはやって欲しくないですね」と言ってしまった。市民が自ら行うステロイドの自己注射なんてアメリカでもありえない。非合法の筋肉増強剤くらいなものだろう。すでにエピネフリンの自己注射が日本でも許可になってから数年以上が経過している。これからどんどん展開して行こうという矢先になんと認識不足な発言であろうか・・・。しかもどうもアレルギーの専門医のようである。これを見た市民は「自分で注射するのはいけないのか」と誤解してしまう。ああ・・・これでまた5年は遅れるかもしれない。いい迷惑である(怒)。


唖然 その2

2010年02月12日 06時54分22秒 | インポート

Photo_step2_51_2  重度のアレルギーを持つ人はペン型の注射器にエピネフリンが充填されたエピペンという製品の携行が勧められている。過去、日本では自己注射が認められていなかったのでこの製品も許可されなかったが、ようやく救命的見地からの緊急性が認められ、この製品を一般市民に処方できることになった。喜ばしいことである。今後も重度アレルギー患者さんに、この製品をPRして救命の機会を逸してしまわないようにマスメディアも協力して欲しいものである。ところが・・。


唖然 その1

2010年02月10日 06時34分24秒 | インポート

 この前、日テレ系の番組で「世界仰天ニュース」と言うのを見ていたら、ピーナッツアレルギーのアメリカの少女の話になった。役者をつかったアメリカの資料映像で、アナフィラキシーをおこした少女の大腿に父親がエピネフリンの注射をする場面が出た。これはもう4~5年前から日本でも行なわれているが、アレルギーをもともと持っている人がエピネフリン(アナフィラキシーショックの時に用いる薬)を自分で注射する方法である。重症のアレルギー発作は病院まで命がもたないので、現場ですぐに自分で行なうことに意義があるのである。


大叔父のこと その4

2010年02月09日 06時44分30秒 | インポート

 昔は神奈川の大磯にアトリエを構えていたが、20年前に故郷にもどり紫波町の小学校の廃校跡に住んでいた。そのアトリエに遊びに行ったのは10年くらい前だったろうか? グランドピアノやチェロが置いてある広い仕事場で早池峰山の超大作を描いていた。その時に「齢とると大作を手がけるのが億劫になる。だいたい夕方になるともう飲みたくなってくるので一向に絵筆がすすまない」とこぼしていた。生来の酒好きのため、夕方から飲み始めるとチビチビ続き12時頃まで飲んでいるようであった。美味しいものと日本酒には目がなかった。大叔母が言っていた。「まだ本人の飲みかけのお酒があるのよね」と。もちろん彼の努力と才能もあるが傍で見ていると、とても羨ましい人生だったと思う(合掌)。