Yちゃんとは兄が同年代だったので、自分もくっついてよく遊んだ。やせて背が高くて、性格は大人しく声を荒げることはなかった。彼のうちはすでに社会人(と記憶しているが)のお兄様とお母様の3人暮らしであった。彼のうちで遊んでいると、時々お兄様がネクタイ姿で帰宅し「おいY、家の中は整理整頓しておけといったろう」と彼を叱ることがあった。厳格な兄と比較してお母様は自分にもやさしくて時々、自家製の樽に漬けたラッキョウや海苔を巻いたおにぎりなどを作ってくれた。海苔は当時高価で家でもあまり食べた記憶はなかったので1帖を使った大盤振る舞いのおにぎりはとても美味しかった。近所では水道が普及していたが彼のうちは井戸をつかっていた。汲み上げ用の棒を上下させると、地下からこんこんと透明な液体が湧き出てくるので、その不思議さに目をみはったものである。
(写真は左より自分、兄、Yちゃん)