吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

詐欺師 その3

2017年05月10日 06時00分48秒 | 日記
 「とにかく今は身体の調子が悪い。明日にしてくれ」と見え見えの理由をつけてきた。まあそれで入院させて逃げられても、こちらの責任はないからいいやと思っていた。

 しかしこの詐欺師の次の言葉でイラッとした。
 「実は俺はここの病院の院長を良く知っている。仲がよくて時々飲みにも行っているんだ」と言い出した。
 詐欺師がよく使う手である。相手の組織の上司の名前を出して自分の申し出を「忖度」させようという魂胆である。
 まあ今回の籠池理事長が昭恵夫人の名前を財務省官僚の前で連呼するのとまったく同じである。

 しかしながら医療業界、殊に病院で院長の名前を出しても忖度材料にはならない。むしろ逆効果である。 
 ここは詐欺師の分からない世界なのである。医師の人事権は院長ではなく所属科の部長が持っていることが多いのである。
 例えば大学病院では病院長よりも自分が所属している主任教授のほうが怖いのである。しかも医師は個人個人現場ではかなりの専門的裁量権をもって診療にあたる。自分の責任が重い反面、院長などの存在はほとんど診療の遂行には関与しない。
 だから現場での専門医の判断、診療内容は、いくら院長とは言え容易に方向変換できるわけではない。