吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

詐欺師 その6

2017年05月13日 05時56分02秒 | 日記
 今回籠池元理事長が、相手組織に利害関係のある個人の名前を出すことにより自分の意向を忖度してもらうことは、結局、詐欺師が相手の組織の長の名前を出すことで自分の意見を通させる方法と似ていると感じたのである。
籠池元理事長が詐欺師かどうかは自分の知るところではないが、手法としては詐欺師のそれなのである。

 この事件を見るにつけ当時自分が若かりし頃の詐欺師事件を思い出す。今、何をしているのか知らないが、また開腹手術痕が増えているのではなかろうか? あんなにたくさん手術したら癒着性腸閉塞になる可能性が高くなるのに・・・と思うのである。
 この相手側に自分の意向を忖度させる手法は一般社会では通用するかもしれない。でも医療の現場はちょっと違う。大きな病院で組織体型になっていても医師の集団なんてみんな「個人商店主の寄合」のようなものである。みんな各々が自分が大将なのである。だから「現場医師にそこの院長の名前を出すと逆効果になる」ということは思いもつかないであろう。
 自分はあの詐欺師に騙されたわけではないが、結果的に逃げられて「お間抜け医師」としてTVにでてしまったのでちょっとわだかまりは残っている。あの詐欺師も今生きていれば80歳はゆうに過ぎているだろうに。

詐欺師 その5

2017年05月12日 05時56分08秒 | 日記
 しかしもう夜も遅い。他にも救急患者は診察を待っている。なんだかこのまま、こんな詐欺師に関わっていると面倒臭そうなので「あ じゃあいいですよ。あす内視鏡しましょう」といって病棟に入院させた。

 この詐欺師が何をして勾留されたのか、今後どうなるのかなど別にどうでもよかった。しかも警察から「逃げられてもいい」と言われていたので軽い気持ちで病棟に入院させた。・・・で、結局明け方ナースステーションからの電話・・・。「せっ、せんせい! あの患者さんがいません・・・」と。
 まあそうなるだろうと思っていたがその通りになった。とりあえず所轄に連絡にしたが、その後別に警察の担当者が来院することもなく事情説明にもくることはなかった。

 別に何とも思わなかったが、その後、TVで朝の情報バラエティ番組から「病院から逃走した針金飲んだ詐欺師」ということで取材が行われた。自分が主治医だったのでレントゲン写真を見せて説明しながらTVに映った。
 でも後日番組をみた人から「逃亡されてしまったちょっとお間抜けな医師」という印象にも映ったよと・・・。クッ、くそお~、俺はマヌケじゃないと言ったが後の祭りだった。

詐欺師 その4

2017年05月11日 05時46分18秒 | 日記
 詐欺師はそんなこと知らないので院長の名前を出せば詐欺師は自分の意見が忖度されると勘違いしているのである。この詐欺師は「おれはここの病院の院長を良く知っている」と言いったが、その名前を出せば現場の医者が忖度するだろうとこちらを「安く見た」ことにイラッとしたのである。
 思わず自分も言い返した。
「あ~そうですか、それはよかった。でも貴方より私の方がもっとよく院長先生のこと知っていますよ。わたしもよく病院の宴会では院長先生と飲みながらお話良くしていますけど」と言った。でも自分のこの話は嘘ではない。

「さあ、では内視鏡室行きましょうか?」と行ったら今度は「いや、待ってくれ院長にちょっと電話させてくれ」と言い出した。
 救急外来の廊下の奥には公衆電話があった。そこでその詐欺師は電話をかけ始めた。でも演技である。電話などかけていないのは見え見えである。
 わざと大きな声で「あ~お世話になっています、実は・・・というわけで病院に居ます、ハイ・・・、ハイ・・・、じゃあ、そのように伝えますので」といって受話器をおいた。
 
 そしてその詐欺師は「院長先生から内視鏡は明日にするよう伝えてくれと言われました」と・・・。そんなこともちろん院長がいう訳がない。医療の現場を知らない者の言動はいくら詐欺師とはいえトンチンカンなのである。

詐欺師 その3

2017年05月10日 06時00分48秒 | 日記
 「とにかく今は身体の調子が悪い。明日にしてくれ」と見え見えの理由をつけてきた。まあそれで入院させて逃げられても、こちらの責任はないからいいやと思っていた。

 しかしこの詐欺師の次の言葉でイラッとした。
 「実は俺はここの病院の院長を良く知っている。仲がよくて時々飲みにも行っているんだ」と言い出した。
 詐欺師がよく使う手である。相手の組織の上司の名前を出して自分の申し出を「忖度」させようという魂胆である。
 まあ今回の籠池理事長が昭恵夫人の名前を財務省官僚の前で連呼するのとまったく同じである。

 しかしながら医療業界、殊に病院で院長の名前を出しても忖度材料にはならない。むしろ逆効果である。 
 ここは詐欺師の分からない世界なのである。医師の人事権は院長ではなく所属科の部長が持っていることが多いのである。
 例えば大学病院では病院長よりも自分が所属している主任教授のほうが怖いのである。しかも医師は個人個人現場ではかなりの専門的裁量権をもって診療にあたる。自分の責任が重い反面、院長などの存在はほとんど診療の遂行には関与しない。
 だから現場での専門医の判断、診療内容は、いくら院長とは言え容易に方向変換できるわけではない。

詐欺師 その2

2017年05月09日 05時51分14秒 | 日記
 付き添いの警官に耳打ちされた。「今回も逃げようと企んでいると思いますよ。でも、気にしないでください。逃げたら逃げたでいいですから」と何ともユルユルの感じ。

 さて、レントゲンで針金が食道にある。これは内視鏡で異物鉗子でつかめばすぐ除去できそうである。「じゃ、今すぐやりましょう」と言ったら、その詐欺師はちょっとあせったような態度であった。
 そりゃそうであろう、いつものように「開腹手術でとりましょう」とこの詐欺師は期待していたのであろうが、しかし今すぐの内視鏡で異物摘出されたら直後に警察に逆戻りになってしまうからだ。

 ちょっと間をおいて「いっいや、理由は今は言えないが明日内視鏡してくれ」と言い出した。おそらくこのまま入院して夜中に逃亡する予定なのであろう。まあ警察からも「逃げられてもいいですよ」とお墨付きをもらっているので、「まあどうでもいいや」と思っていた。
 とりあえず「このまま時間を置いておくと異物は食道から胃~腸へ移動してしまう。今すぐなら手術ではなく内視鏡で簡単にとれるのでいますぐやりましょう」と型のごとく勧めた。もちろんごく当たり前の話である。
 でもこの詐欺師にとって今すぐ簡単に針金を取られてはまずいのである。このまま、何もせず入院に持っていきたいわけである。

詐欺師 その1

2017年05月08日 05時49分55秒 | 日記
 先日、森友学園元理事長の籠池氏が民進党の質問を受けていた。
 今回新たに籠池氏と財務省の官僚との面談時の録音資料が公開されたことに関連しての質問であった。

 会話の中で盛んに籠池氏は「昭恵夫人」の名前をあげたり、自分は彼女と親密な関係であることを強調したりしているような印象を受けた。これをみて自分が昔、某地方の病院に出張中、勾留中の詐欺師が警察官に伴われて夜間に来院し、診察したことを思い出した。

 その詐欺師は当時、初老の男で、なにやら詐欺事件で警察に勾留、取り調べを受けていたのであるが、隙を見て隠し持った針金を飲み込んだのである。警察も疾病を抱えたものは受診させなければならないらしい。このような場合は医療機関受診が必要となる。警察官に付き添われたその詐欺師のレントゲンを撮ったら針金はまっすぐに伸ばされたものであり食道下部に位置していた。腹部の診察をしたら腹部には数本の手術創がみられた。どうやら過去にも警察に勾留中に異物をわざと呑み込んでは病院で開腹手術を受け、そのまま病院から逃走すること繰り返していたのだ。

医療機関って? その3

2017年05月06日 05時31分57秒 | 日記
 それにしても、学校健診で医療機関受診の指示があったにもかかわらず最初に整体院に行ってしまったご家族の誤解度には驚く。
 そして「まずうちではなく、きちんと病院で検査を受けて診断してきてもらってください」と指示を出さない整体院にも驚いた。そしてそれが数年?もの間、自分の所で整体治療?を続けていたのにも驚いた。

 まずはとにかく本当にどの程度の側弯症なのか診た。ところが、脊柱に偏位はほとんどなく、両手指を床に付けさせて前屈させた状態で肩甲骨の高さをみたがとくに歪みもない。
 これでは完全に学校における一次検診で「異常なし」の部類になる。
 
 本人に「側弯症ないようですよ。精密検査いらないし、なにも症状なければ整体にも通わなくてもいいんじゃない」と告げたのである。
 しかし、これで整体に通院しなくなったら整体院から「営業妨害」と言われるのか、あるいは「数年間自分が月に1回施術してきたので側弯症が治ったんだ」と言われるかもしれない。
 どーなんだかなー?

医療機関って? その2

2017年05月02日 05時17分54秒 | 日記
 驚いた。学校の健診で要精密検査の二次検診にまわれば、通常は医療機関受診ということで病院等に行くはずである。
 ところが家人は病院で診察を受けることなく最初から「整体治療院」に行ったそうである。そしてそこで「治療」というものが開始されれば、翌年度の学校健診での問診票には「加療中」ということでスルーされてきた可能性がある。
 鍼灸按摩は国家資格であるが、看板でよく見かける「整体」というものは無資格のものであり医療機関ではない。特になんらトレーニングをしなくても開業できると聞いた。もちろん病気の診断は不可能である。

 ところがご家族は、整体院を医療機関と誤解して、二次検診の段階で病院に行くべきところを整体院に行って、そこからすぐ「治療中」となった。
 その生徒さんは月に1回医療機関で治療を受けているといったが、生徒のみならずご家族が整体を医療機関であると誤解されているのである。
 整体に通うのもまあ・・勧められないが自己責任ということで否定はしない。でもまずは精密検査からおこなってきちんと「診断」してからの話である。
 これは学校健診でピックアップされ精密検査の受診漏れになった落とし穴の例であろう。
 何ともやりきれない気持ちになった。

医療機関って? その1

2017年05月01日 05時46分11秒 | 日記
 先日、某高校の健診のお手伝いに行った。
 ある生徒の問診票を見ると、「脊柱側弯症で加療中」とある。通常側弯症は成長期にみられ成長とともに軽快することも多いので経過観察のみのことが多い。しかし生徒さんは「治療中」と言っていた。

 よっぽど重症なのかと思い「治療しているって、どんな治療しているの?」と聞いたら、骨盤の歪みを毎回マッサージなどで戻しているのだそうだ。
 1か月に1回は行っているらしい。えっ、徒手整復で側弯症が治るのかなと不思議に思って「どこの病院に通院しているの?」と聞いたら、病院ではなく「整体治療院」だそうだ。
 話を良く聞くと、中学時代に学校の健診で側弯症が指摘され医療機関受診が勧められている。
「その時病院に行ってレントゲンとかとったの?」と聞いたら、病院には今まで行ったことは一度もないそうである。
「医療機関受診」という指示が出たので整体治療院にいって「診療」を受けていたそうである。
・・・絶句である。