Sightsong

自縄自縛日記

リチャード・ミドルトン作品集『屋根の上の魚』

2014-02-07 22:55:11 | ヨーロッパ

先日、用事のついでに西荻窪に立ち寄り、盛林堂書店という古本屋を覗いてみた。かなり好き者的な本屋で、ミステリーや幻想文学のたぐいが多く揃っている。さらに驚いたことに、なかなか陽の目を見ない作品を、自ら出版しているのだった。

リチャード・ミドルトン作品集『屋根の上の魚』(2013年、盛林堂ミステリアス文庫)もそのひとつ。くるみ製本の文庫本で、200部くらいしか刷っていない模様だ。これは気になったときに入手しないと、すぐに無くなってしまう。

ミドルトンははじめて読む作家である。1882年にロンドン近郊に生まれ、1911年にブリュッセルで服毒自殺。30年にもならない短い人生だ。

本書には、11の短編が収録されている。どれも奇妙な味があり、まるでソフトフォーカスで夢を視ているようだ。良い夢も、悪い夢もある。それらの夢が、例外なく、憂鬱や憂愁といったものに結びついている。

世界が憂鬱なのではなく、むしろ、世界に向き合わなければならない定めが憂鬱なのであり、屈託ない行動に背を向けて「書くこと」「夢みること」が、まるで呪われた人間の業であるかのような印象をもつ。読み終わってもぼんやりした夢のあと。