Sightsong

自縄自縛日記

リー・コニッツ+ダン・テファー@The Jazz Gallery

2017-09-16 20:03:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

The Jazz Galleryに足を運び、リー・コニッツとダン・テファーとのデュオを観る(2017/9/15)。

Lee Konitz (as, vo)
Dan Tepfer (p, vo)

今年の来日には行けなかったし、健康面でどうなのかなという心配もあって、じっくり観ようと思っていた。

ステージに上がるといきなり「リクエストは受けないぞ!で、誰かリクエストは?(笑)」。客席からは躊躇ってリクエストが出ない。テファーが「ブルース」。そんなわけでブルースを吹き始めた。これがコニッツ節。フレージングが知的で、中間音を使っていて、往年のスピードがない分人間的。エアを含ませつつアンブシュアの外にも漏れていて、それがサウンドと周囲の環境との間をなめらかなものにしている。

「Body and Soul」や「'Round Midnight」を吹くのだが、もちろんそのままではない。また「で、リクエストは?」と訊き、客席から「My Funny Valentine」という声があがるとまったく別の曲を演奏(何だったんだ?)。そして5曲目にスキャットを披露。コニッツのアルトそのものである。これを聴くと、スピーディーに運動神経を効かせてアクロバティックなプレイをすることがひとつの価値に過ぎないことがよくわかる。

「Alone Together」では、テファーは音を選び、それを長く響かせるというプレイをみせた。7曲目にはテファーは内部奏法も行い、コニッツに応じて、ふたりでスキャットも行った。テファーが頑張りすぎてカッコいいスキャットをやってのけると、コニッツは口を歪めてキッと唸り会場爆笑。しかしコニッツのスキャットは相変わらずコニッツ節。

なぜかテファーのピアノソロによるバッハを経て、最後は「Nearness of You」。うう、胸が熱い。

「今日はありがとう。明日もここでやる。まったく同じ曲目を(爆笑)」。

終わってから、せっかくなので、20年ぶりにコニッツにサインをいただいた。

「20年前に東京のDUGで観たんですよ」「お前の言いたいことはわかったがまるで覚えていないな。ところでお前は何かを演奏するのか」「むかしアルトを齧りましたがまあ下手なので」「何言ってんだ、トライは続けなきゃだめだ」

結論、まったく元気で相変わらずカッコよく素敵である。オシャレで、機敏なユーモアも毒気もある。もう嬉しくなってしまった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●リー・コニッツ
リー・コニッツ『Frescalalto』(2015年)
リー・コニッツ+ケニー・ホイーラー『Olden Times - Live at Birdland Neuburg』(1999年)
今井和雄トリオ@なってるハウス、徹の部屋@ポレポレ坐(リー・コニッツ『無伴奏ライヴ・イン・ヨコハマ』、1999年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年) 
リー・コニッツ+ルディ・マハール『俳句』(1995年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』 (1978、83年) 
アート・ファーマー+リー・コニッツ『Live in Genoa 1981』(1981年)
ギル・エヴァンス+リー・コニッツ『Heroes & Anti-Heroes』(1980年) 
リー・コニッツ『Spirits』(1971年)
リー・コニッツ『Jazz at Storyville』、『In Harvard Square』(1954、55年)


イクエ・モリ+クレイグ・テイボーン@The Drawing Center

2017-09-16 19:07:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

NYにいる機会にもう一度クレイグ・テイボーンをと思い、イクエ・モリとのデュオを観るために、The Drawing Centerに足を運んだ(2017/9/15)。これもThe Stone移転前の企画のひとつであるらしい。

Ikue Mori (film, electronics)
Craig Taborn (key, electronics)

会場の照明が落とされ、イクエ・モリによるフィルム『Pomegranate Seeds』(ざくろの種)が上映される。

ゼウスの娘ペルセポネーは、冥府の王ハーデース(ここではプルートー)にさらわれる。その後地上に戻る際にざくろを食べてしまい、神々の取り決めに従い、ペルセポネーは冥府で1年の1/3を暮らすことになる。フィルムは、そのギリシャ神話を題材にしたおとぎ話のようなものだった。

そのフィルムに、イクエ・モリとクレイグ・テイボーンとが音楽を付けてゆく。イクエさんのエレクトロニクスはいつもチャーミングで、聴いていると自分の周りに天体の光が瞬くような印象を抱く。そしてフィルムは一見グロテスクでもあるのだが、どちらかといえば可愛い。小さな世界を覗き見る感覚である。

一方のテイボーンは、このふたりによるデュオ盤『Highsmith』のように硬質のピアノで対峙するのかと予想したのだが、そうではなかった。一緒になってフィルムのコンポジションを行い、その上で発するエレクトロニクスはときにイクエさんの音とどちらがどちらかわからなくなる。キーボードの音も、全体のサウンドの中にまろやかに融け合うものだった。

ちょっと何をやっているのか底知れないテイボーン。この人はこんな感じという捉え方が難しいのかな。

Nikon P7800

●イクエ・モリ
クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(2017年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
イクエ・モリ『In Light of Shadows』(2014年)

●クレイグ・テイボーン
クレイグ・テイボーン@The Stone(2017年)
クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(2017年)
クレイグ・テイボーン『Daylight Ghosts』(2016年)
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
クリス・ポッター『Imaginary Cities』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas II』(2004年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ロッテ・アンカー+クレイグ・テイボーン+ジェラルド・クリーヴァー『Triptych』(2003年)


デイヴィッド・ビニーと仲間たち@Nublu

2017-09-16 15:54:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

「Dave Binney and Friends」(2017/9/14)。昼間に何気なく発見し、驚いて、マタナ・ロバーツのコンサート後に直行した。前に告知もされていなかったはずである。

David Binney (as)
Donny McCaslin (ts)
Chris Potter (ts)
Ben Monder (g)
Thomas Morgan (b)
John Escreet (key)
Dan Weiss (ds)

まるでウルトラ兄弟大集合のようなメンバーである。翌日にアントニオ・サンチェスのバンドでフロントを任せられたふたり(ダニー・マッキャスリン、クリス・ポッター)に加えて主役はデイヴィッド・ビニー。その隣にベン・モンダー。後ろにトーマス・モーガン、ダン・ワイス、告知には入っていなかったがジョン・エスクリート。

The Stoneより北上したあたりにあり(つまり駅から遠い)、看板はない。扉の横に白墨で微妙に書いてあるだけである。IDの提示を求められ、パスポートを見せて入った。20ドル。

中は半地下になっており、ステージの向こう側にはロフトがあってそのカウンターからも見下ろすことができる構造。客は30人くらいだろうか。

そこから1時間のステージは、やはり、それぞれの個人技が愉しめるものだった。マッキャスリンのテクが凄いのはもちろんだが、ポッターのテナーが意外にも野太いことに驚いた(ECMを聴いているとそうなるのか)。ワイスはスティックのみで攻めた。エスクリートのキーボードもぎゅんぎゅん追い込んでめちゃめちゃクール。ビニーはとなりのふたりのメタルと違ってラバーのマウスピースを使い、ぬめっとしたウェットな音を出しつつ、他のソロにも聴こえない程度に伴奏したり、全体のサウンドを気にしたりしていた。

もうお腹いっぱい、というか、何時間もかけて堪能するべきメンバーなのだった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●デイヴィッド・ビニー
デイヴィッド・ビニー『The Time Verses』(2016年)
ダニー・マッキャスリン『Beyond Now』(2016年)
デイヴィッド・ビニー『Anacapa』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Fast Future』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Casting for Gravity』(2012年)  

●ダニー・マッキャスリン
マリア・シュナイダー・オーケストラ@ブルーノート東京(2017年)
ダニー・マッキャスリン『Beyond Now』(2016年)
デイヴィッド・ボウイ『★』(2015年)
ダニー・マッキャスリン@55 Bar(2015年)
ダニー・マッキャスリン『Fast Future』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Casting for Gravity』(2012年)
フローリアン・ウェーバー『Criss Cross』(2014年)
マリア・シュナイダー『The Thompson Fields』(2014年)
マリア・シュナイダー『Allegresse』、『Concert in the Garden』(2000、2001-04年)
 

●クリス・ポッター
クリス・ポッター『The Dreamer is the Dream』(2016年)
『Aziza』(2015年)
クリス・ポッター『Imaginary Cities』(2013年)
ポール・モチアンのトリオ(1979、2009年)
ポール・モチアン『Flight of the Blue Jay』(1996年)

●ベン・モンダー
ベン・モンダー・トリオ@Cornelia Street Cafe(2017年)
マリア・シュナイダー・オーケストラ@ブルーノート東京(2017年)
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、13年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)

●トーマス・モーガン
ヤコブ・ブロ『Streams』(2015年)
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
ポール・モチアン『The Windmills of Your Mind』(2010年)
菊地雅章『Masabumi Kikuchi / Ben Street / Thomas Morgan / Kresten Osgood』(2008年) 

●ジョン・エスクリート
アントニオ・サンチェス@COTTON CLUB(2015年)
デイヴィッド・ビニー『Anacapa』(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)

●ダン・ワイス
デイヴィッド・ビニー『The Time Verses』(2016年)
マット・ミッチェル『Vista Accumulation』(2015年)
デイヴィッド・ビニー『Anacapa』(2014年)
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)
フローリアン・ウェーバー『Criss Cross』(2014年)
エディ・ヘンダーソン『Collective Portrait』(2014年)