The Jazz Galleryにてトム・レイニー・トリオ(2017/9/9)。
Tom Rainey (ds)
Ingrid Laubrock (ts, ss)
Mary Halvorson (g)
シンバルを斜めに斬るようなトム・レイニーの動きからはじまり、イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソンのふたりが両翼からサウンドを厚塗りしてゆく。それはレイニーがマレットを持ったところから前進を始め、ハルヴァーソンのギターはベースのように駆動する。ソロになったときの彼女の常ならぬ時空間の歪ませぶりといったら筆舌に尽くしがたい。ルーパーも使い、何が何やらわからずつい笑ってしまう。
ラウブロックのテナーは相変わらず豊潤であり、ハウリングのような効果も出し、それをハルヴァーソンがシンクロさせる。レイニーのドラムスを観るのははじめてではないのだが、光る撒き菱のような印象とは違って、ここまで力強いものだったかと驚いた。まるで斧のような瞬間も少なくない。
2曲目で変態度が増した。ギターだと思ったらレイニーが手でタイコを擦っており、それがテナーと同調した。ギターは一転してコードを弾く。ラウブロックの地を這うような低音。そしてハルヴァーソンは左手で弦を抑え右手で鍵盤を速弾きするようにしたり激しくスライドしたりとわけがわからない。
3曲目はテナーとドラムスとが中心となってはじまり、やがて、ラウブロックが「Donna Lee」のようなバップ曲的な旋律を吹き、愉快な意外感に襲われる。それもダークな。待って満を持して入ったハルヴァーソンの指はまるでジャコパスであり、彼女もダークなバップを執拗に繰り返す。まるで悪夢だ。互いの役割が固定されず入れ替わり、魔術のようだった。
4曲目、遊ぶような、きらめくような、レイニーのスティックさばき(これが今までの印象だった)。それとともに、ラウブロックが持ち替えたソプラノを吹く。はじめは一筆書きのように長く、やがてじわじわと細分化されていく。ハルヴァーソンは丁寧にコードをのせるようでいて、そこは当代一の変態、きらびやかに歪ませてゆき、こちらは歓喜で顔が歪んだ。
アンサンブルというにはあまりにも個人的であり過ぎて、しかもサウンドが一体化していた。完璧だった。
Fuji X-E2、XF60mmF2.4
●トム・レイニー
イングリッド・ラウブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラウブロック『ubatuba』(2014年)
イングリッド・ラウブロック+トム・レイニー『Buoyancy』(2014年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』(2011年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ティム・バーン+マルク・デュクレ+トム・レイニー『Big Satan』(1996年)
●イングリッド・ラウブロック
イングリッド・ラウブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラウブロック@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラウブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラウブロック+トム・レイニー『Buoyancy』(2014年)
イングリッド・ラウブロック『ubatuba』(2014年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(2014年)
アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)
イングリッド・ラウブロック『Who Is It?』(1997年)
●メアリー・ハルヴァーソン
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
『Illegal Crowns』(2014年)
トマ・フジワラ+ベン・ゴールドバーグ+メアリー・ハルヴァーソン『The Out Louds』(2014年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)