実相寺昭雄『無常』(1970年)を観る。随分久しぶりだが、改めて、実相寺とは偉大なるスタイリストであったのだと強く思う。『怪奇大作戦』や『ウルトラマン』といったテレビシリーズでも、映画でもそうだった。晩年の『姑獲鳥の夏』(2005年)においてなお、マガマガしいまでの癖と毒を発散していた。
『アートシアター ATG映画の全貌』(夏書館、1986年)より
何の救いもない酷い物語であり、地獄極楽や悪に関する演説などはすべて実相寺の独特な撮影世界を引き立たせるために奉仕する。超広角レンズと魚眼レンズによる奥への/からの動き、下からのアングル、傾いた地平、逆光、ハイキー、画面半分での視線をそらした顔のクローズアップ。それはあまりにもわかりやすく、だからこそフォロワーが出てこない。
舞台は琵琶湖近くの旧家と京都である。丹波篠山を舞台にした『哥』といい、『怪奇大作戦』での「京都買います」や「呪いの壷」での京都といい、なぜ江戸っ子の実相寺がこのあたりにこだわったのだろう。そういえば、悲惨な死に方をする書生を演じた花ノ本寿は、「呪いの壷」において自滅する男の役でもあり、毒粉を自ら浴びて黒目の色が変わる場面は忘れられない(『無常』での旧家と同じ日野という名前だった)。
ウルトラマンマックスとメトロン星人(『ウルトラマンマックス』、「狙われない街」の再現)
『ウルトラマン展』(2006年、川崎市民ミュージアム)より
Pentax SP500、EBC Fujinon 50mmF1.4、Velvia100
●参照(実相寺昭雄)
○霞が関ビルの映像(『ウルトラマン』、「怪獣墓場」)
○『時をかける少女』 → 原田知世 → 『姑獲鳥の夏』
○怪獣は反体制のシンボルだった(『ウルトラマン誕生』)
●参照(ATG)
○黒木和雄『原子力戦争』
○若松孝二『天使の恍惚』
○大森一樹『風の歌を聴け』
○淺井愼平『キッドナップ・ブルース』
○大島渚『夏の妹』
○大島渚『少年』
私にとっての実相寺は、どうしても『ウルトラマン』であり『怪奇大作戦』なのですが。