アンブローズ・アキンムシーレ『Origami Harvest』(Blue Note、-2018年)を聴く。
Ambrose Akinmusire (tp, key, whistle, words)
Kool A.D. (vo)
MIVOS Quartet (strings)
Sam Harris (p, key)
Marcus Gilmore (ds)※クレジットされていない
Guest:
Michael Aalberg (key) (1)
Lmbrjck_t (vo, lyrics) (4)
Walter Smith III (ts, efx) (3)
サウンドとしては異色なもので、弦楽四重奏のMIVOS QuartetとラップのKool A.D.とが平然と共存しており、サム・ハリスのピアノやマーカス・ギルモアのドラムス(なぜか名前がクレジットされていない)とが加わることでジャズ的作品と化している。もちろん、アンブローズ・アキンムシーレの輝かしく知性的なトランペットは出てくるたびに主役の座を奪う。
ジャケット裏にアキンムシーレが書いているように、両極の間に架橋するというコンセプトのようである。ラップの歌詞(>> リンク)も例えば禍々しいものとストレートなものとが並んでいるが、韻を踏むのだから特別視するには及ばない。
むしろ歌詞は現代アメリカを反映したものとなっているようであり、例えば、アフリカン・アメリカンの若者を警察官が射殺したトレイボン・マーティン事件(2012年)が意識されているという。2曲目の「Miracle and Streetfight」では、複数の曲で思い出したように挿入される「America / Americana / America, nah」のあとに、「The big monster / The pigs kill men / with the pig miss darker」という歌詞がある。(ところで、やはり複数の曲で「Please slide through the avenues Everything’s everything / Diagonal」とは何を示唆しようとしているのだろう?)
マタナ・ロバーツの「breathe...」(2017年)がそうであったように、こういったアプローチは作品として昇華させる力を持っている。なにもアメリカだからというわけではない。磯部涼『ルポ川崎』に書かれていたように、抽象的なものではないナマの社会問題とラップの表現とは近い距離にある。
●アンブローズ・アキンムシーレ
ウォルフガング・ムースピール『Where the River Goes』(2018年)
アンブローズ・アキンムシーレ『A Rift in Decorum: Live at the Village Vanguard』(2017年)
メアリー・ハルヴァーソン『Code Girl』(2016年)
トム・ハレル『Something Gold, Something Blue』(2015年)
トム・ハレル@Village Vanguard(2015年)
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』(2014年)
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)
タールベイビー『Ballad of Sam Langford』(2013年)
デイナ・スティーブンス『That Nepenthetic Place』(2010年)
ミシェル・ポルタル『Bailador』(2010年)
アンブローズ・アキンムシーレ『Prelude』(2008年)
ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)