本八幡のcooljojoにおいて、かみむら泰一・齋藤徹デュオ(2018/1/14)。
taiichi Kamimura かみむら泰一 (ts, ss)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
齋藤徹さんがcooljojoではじめて音を出す。それは縁のようなものかもしれなくて、なぜなら、cooljojoが高柳昌行のアルバム名から名付けられた場であるからなのだ。この演奏の前に、テツさんがかつて高柳昌行と共演したときのノートや楽譜を発掘したそうであり、それらは、かみむらさんの手に渡されていた。
最初はショーロから。「薔薇」(ピシンギーニャ)と「鱈の骨」(セベリーノ・アラウジョ)、かみむらさんはソプラノを吹く。まるで空気に消え入ることを最初からビルトインしたような音である。「Cheguei」(ピシンギーニャ)ではテナーに持ち替え、テツさんは笛を吹きながら2本の棒で弦を叩く。「Dikeman Blues」(かみむら泰一)は、かみむらさんが住んだこともあるNYのDikeman St.から名前を付けたそうであり、最初はどブルース的に、やがて「Willow Weep for Me」のような旋律でジャズ的な雰囲気へとシフトした。ソプラノはシドニー・ベシェを思わせる縮緬の音も発した。そしてなんと、「Serene」(エリック・ドルフィー)。これは高柳ノートにあって、ほとんどリハばかりをやっていたものだという。想像するだけで震えるようだ。
テツさんのコントラバスは終始好調で、ここまで飛ばして良いのだろうかと逆に心配にもなるほどだった。cooljojoという共鳴空間の中で、ガット弦のひとつひとつのノイズを含み持つ響きが、全体の大きなうねりへと展開していった。
セカンドセットは、「縄文」(かみむら泰一)から。ソプラノは管の長さからも物理的によれやすい楽器だが、かみむらさんは、ベンドでさらに過激に大きな周波数の振幅をもってよれさせた。そのままインプロへ。テナーは無音と有音との間を往還する。マージナルな音を増幅するのではなく、真ん中の音をそのように扱う。演奏後にかみむらさんに訊いたところ、ジャズ的にテナーが道の真ん中をひた走るのではなく、テツさんの音とともにサウンドを作るために、このような形になったのだという。
次の「バンドネオンソロ」(齋藤徹)では、コントラバスによる静かな繰り返しがあり、ソプラノはエアの中に抒情を込めた。「結婚式の旅行」(ピアソラ)は2声のみによる和音を生かした曲なのだという話があった(これもまた、高柳ノート)。そのこともあったのだろうか。テナーとベースの弓弾きが距離を置くような感覚でシンクロした。そしてアンコールは、ふたたび高柳ノートから、「ショーロの呟き」(アベル・フェレイラ)。愁いのような旋律を微妙にテナーとコントラバスとでずらし、コードもまたゆっくりとずらしていった。
終わったあと、会場と近くの居酒屋でいろいろな話を聞いた。そしてまた、新しい音の縁もできるようなのだ。
Fuji X-E2、XF60mmF2.4
●かみむら泰一
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)
●齋藤徹
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン