相倉久人『現代ジャズの視点』(角川文庫、原著1967年)を読む。
本八幡Cooljojoに設けられている高柳昌行の書棚には、元のハードカバー版があり、発売直後に入手されていた(高柳氏はマメだったようで、本の裏などにいちいち入手日と名前が記されていた)。そんなわけで読もうかなと思っていたら、阿佐ヶ谷の古書コンコ堂で文庫版を257円で発掘した。
亡くなるちょっと前に書かれた『至高の日本ジャズ全史』と同様に、著者が司会を務めていた「ジャズ・ギャラリー・8」での活動時に書かれた1961-68年のことが記録されている。「銀巴里」での活動を振り切った後のことである。
もちろん今読んでも迫真性がある。その筆は、日本においてジャズは根付くのかといった観点で一貫しており、そのために、日本に失望して再渡米した穐吉敏子さんには批判的だ。
面白い記述はいくつもある。たとえば渋谷毅さんについて。生きること自体がジャズであり、ヒップスターであったという。その一方で、ジャズメンはその裡にジキルとハイドを併せ持たなければいけない、ともいう。そして、「渋谷毅のように、彼自身が、ジャズであるような男には、なかなかほんとうのジャズが、演奏できないのだろう」と結論付ける。
さてこれを読んで、高柳さんはどう思い、のちに渋谷毅オーケストラの原点となったグループを組成したのだろう。渋谷さんはどのように変貌し、それを相倉さんはどのように見ていたのだろう。