壱岐一郎『国が共犯!日中米4大謀略事件+3・11』(ウインかもがわ、2011年)を読む。
『けーし風』の読者会に参加された著者から買ったものである。(『けーし風』はこんな面白さもあるのです。)
表紙にあるように、権力による「謀略」が事実認定されている事件、そう疑われる事件が、取り上げられている。
張作霖爆殺事件・柳条湖事件は、関東軍による偽装だった。これをきっかけに、日本は侵略行動をエスカレートさせ、満州国を作りあげた。ただ当時はさほど巧妙ではなく、すぐに国際的に知れることになってしまう。
松川事件はひどい冤罪事件であり、日米による労働組合・共産党潰しが疑われるものだった。
ケネディ暗殺も、「9・11」も、真相は闇の中。著者は、米国における大きな力が働いたとする。
正直言って、わたしには「9・11」が米国による想定内の事件だとする説はとても信じられない。それを含め、いずれもざっくり言えば「陰謀論」である。しかし、関東軍の暴走も、戦後の米国による世界各地でのさまざまな謀略も、今では事実認定され、歴史に刻みこまれている。「9・11」についても、理屈ではなく感覚的に信じられないだけの話であり、真か偽か、いずれは明らかになることだ。
少なくとも、近現代史は帝国の表面に出てこない大きな力で動いてきた。それを「陰謀論」だと片付けることはナイーヴに過ぎることに違いない。あるいは知的退行だとも言うことができる。(もっとも、根拠なく陰謀論ばかり語る極端な人もいるが。)
わかりやすくまとめられた本である。日本人は細かい知識には詳しいが大きな流れを語るのは苦手だ、とする指摘には、納得させられる。「日本の風土には異論排除のイデオロギー(偏狭思想)が強く、「お上」=政府、米国を信じやすい心情が根強い」という指摘も、原発事故を経てさらに明らかになっている。