ジョージ・ロイ・ヒル『ガープの世界』(1982年)。いやあ懐かしい。ジョン・アーヴィングの長い小説を、新潮文庫の2分冊で読んだのが高校生のとき。友人の家に泊まりに行って新聞のテレビ欄を開いたら、夜中に放送することがわかって、ひとりだけ起きて、カットだらけの吹き替え版を観たのが大学生のとき。
レンタルヴィデオ店はあっても、なかなか観たいものは置いていなかった。そのため、何軒もの会員になっていた(なかでも、音羽にあった文芸坐経営の店がすばらしかった)。それが、今では、DVDもネット配信も溢れている。これだって中古盤で500円。簡単すぎて哀しい。
看護婦の母は、第二次世界大戦中、ろくに言葉を発せなくなっていた死に行く兵士と強引に交わり、ガープを産んだ。ガープは成長し、レスリングに没頭し、恋に落ちる。母は男性を悪とみなす運動のリーダーとなり、過激なオピニオン本がベストセラーになる。ガープも作家になる。やがて、夫婦の間には亀裂が走り、悲劇が訪れる。
アーヴィングの小説はおとぎ話のようだったが、この映画も、ドライに明るい画面、断片化したさまざまな物語、ロビン・ウィリアムスの個性などによって(高校生役を演じるロビンにはムリがあるのだが・・・)、やはり現実から微妙に遊離した物語になっている。世界をファンタジックに描くという点で傑作。
ところで、最大の悲劇は、ガープの妻が浮気をする車に、ガープの車が追突してしまうときに起きる。要は、その衝撃で、浮気相手の大事な部分が無くなってしまう。高校生のとき、そのくだりを読んで、マサカコンナコトガと慄然としたものだった。映画ではさすがに直接的には描けず登場人物が説明するだけだが、それにしても、いまだに慄然とする。