神奈川県近代文学展の安部公房展。展示内容がとても豊富で驚いた。
8インチフロッピーのワープロやKORGのシンセも、2台のコンタックスRTSやミノルタCLEも実際に目にすることができてうれしかった。
もうひとつの目当ては苅部直さん(政治学者)と鳥羽耕史さん(文学研究者)との対談。
若いころ共産党に入った安部が展開したのはシュールレアリスム的な表現であり、これがソ連式リアリズムとどう折り合いを見出したのかという指摘がおもしろい。もとよりシュールレアリスムが大衆に向けられた手段であったこと、一方で安部が活動した下丸子文化集団では相手が市民であろうと容赦なくカフカの話などをしていたことについても言及があり、そのアンバランスさは今後も安部への視線のひとつであるにちがいない。
そして、『箱男』では匿名性をもとにしたデモクラシーとユートピアを見出そうとしたのではないかという指摘。それから、『闖入者』~『友達』では共産党の上意下達のエリート組織に違和感を覚え、それが自分たちのみへの忠誠心を尊重する者を描いた『榎本武揚』に結実したのではないかという指摘。筒井康隆『脱走と追跡のサンバ』が『壁』のパロディなんて知らなかった。
鳥羽さんに「いやご著書の運動体というタームを自分の本に拝借してうんぬん」と押しつけがましい挨拶をして中華街に下山。友人の南谷さんと北京飯店で食事したところ、ベイスターズ日本一記念で「エビチリとエビマヨの紅白盛り」が26%オフだった。つまり26年ぶりの日本一。天才鈴木尚典の記憶だけが残っている。
●安部公房
鳥羽耕史『安部公房 消しゴムで書く』
『「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄』@松濤美術館
鳥羽耕史『運動体・安部公房』
2014年2月15日、安部公房邸
安部公房『(霊媒の話より)題未定』
安部公房『方舟さくら丸』再読
安部公房『密会』再読
安部公房の写真集
友田義行『戦後前衛映画と文学 安部公房×勅使河原宏』
山口果林『安部公房とわたし』
安部ヨリミ『スフィンクスは笑う』
勅使河原宏『燃えつきた地図』
勅使河原宏『おとし穴』