今福龍太『霧のコミューン』(みすず書房、2024年)。「群島」的な思考、大文字の歴史への疑い、AIへの疑い、やはり読んでいて発見することが少なくない。
今年亡くなった詩人の川満信一さんについての章もあった。東アジアの島嶼部において独自に構想されてきたヴィジョンとして、島尾敏雄(ヤポネシア)、谷川雁、崎山多美、エドゥアール・グリッサンらとともに川満さんの思想が挙げられている。
もちろん、川満さんが沖縄独立を想って書いた憲法案「琉球共和社会憲法C私(試)案」(1981年)も思想のひとつの成果であるけれど、それは実際のところそれは体系的でもなんでもなかった。だから今福さんも共鳴したのかもしれない。僕の手元には川満さんの個人誌『カオスの貌』が4冊ほどあって、ときに思い出して開いてみてもすぐになにかが得られるようなものではない。そのあたりに大いなる価値を見出すべきなのかな、と思っている。
●川満信一
川満信一『沖縄発―復帰運動から40年』
仲宗根政善『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』、川満信一『カオスの貌』
仲宗根勇・仲里効編『沖縄思想のラディックス』
『越境広場』創刊0号
仲里効『悲しき亜言語帯』
知念ウシ・與儀秀武・後田多敦・桃原一彦『闘争する境界』
鹿野政直『沖縄の戦後思想を考える』