アオヤギソウと名がつくものは花が緑色のものが多いのですが、ここでは微妙な色彩が入っています。しかし、シュロソウと名の付くもの(濃紫色)とはかなり違います。平標山の近辺ではこういうタイプの花が主流のようです。
ここまでくるとムラサキタカネアオヤギソウとなるのでしょう。タカネアオヤギソウもムラサキタカネアオヤギソウもシュロソウ属の下位レベルの差異とされるようですが、いろいろに多様な名前が多くて私の中ではかなり混乱気味です。交配も起こると考えられますから雑種のようなものもいくつかあるのではないかと思います。
APG植物分類体系ではシュロソウ科(メランチウム科)としてユリ科から分離されています。
APG植物分類体系ではシュロソウ科(メランチウム科)としてユリ科から分離されています。
花は全くありませんが、葉の切れ込みに特徴があるハクサンイチゲの群落が目に留まりました。やや、生育期のピークが過ぎているため他の草本類に押されて埋没しそうな雰囲気はありますが最後の結実期を営んでいるようです。登山道から離れた場所の様子が判然としませんが、手前にある群落から推測すると花の季節はかなりの花数が見られるのではないかと思います。
ハクサンイチゲの傍に久しぶりに見たイワインチン。まだこちらは花の季節になっていないのでこの種も花がありません。つぼみが見えてもよいのですが、株の栄養状態が良くないのかこの株には一つも出ていませんでした。葉の切れ込みが極めて細いのが特徴です。キク科の高山植物。
今年も各所で見てきたミヤマニガイチゴ。きれいに実の写真が撮れましたので載せることにします。ブナ帯から亜高山帯まで見られます。あまり大きな果実にはならないようでニガイチゴというわりには苦くなく食べれます。
稜線で目立ったアザミがオニアザミです。新潟県内の高山の頂部や稜線上ではかなり一般的でしばしば遭遇します。群生しているということはないのですが、点々と自生していてかなり自己主張しているため目立ちます。名前の通り棘が痛くてまさに「鬼のよう」。花の季節ですから花だけ見ている分には大いに癒される存在です。
オニアザミの分布は日本海側の山地の草原というのが一般的な言われ方です。植物同好じねんじょ会の資料によると、新潟県内の水平分布では県境に沿って北から南まで一定の範囲で帯状に見られます。それを素直分布に直してみると海抜数十mから2000m辺りまでほぼ連続的になります。その理由を調べてみると、阿賀野川沿いと県北の村上などで低海抜の記録が集中していますが、平標などの中・上越の県境はすべて高所の記録になっているのです。面白い分布をしている種であることが分かりました。
花の咲いている個体はありませんがシオガマの一種。予想ではこのあたりに見られるのはヨツバシオガマがもっとも可能性があると思っていますから、そのつもりでカメラに収めたのですが、かえって写真を整理していると「葉が4枚輪生する」というカットが一枚もありません。草丈も思いのほか高く、「あれれ?ヨツバシオガマではないのかな?」と少々頭の中がパニック状態。果実の写真を撮ってありますが、付け合わせる図鑑などにはそういう写真は1枚も探し出せません。
6枚が輪生する個体です。これでもヨツバシオガマ。かなり悩みましたが、他の特徴や地域も考えてこの種はヨツバシオガマと判断しています。葉の色具合あ質感、茎の様子などなど。6枚も輪生するというのは栄養状態が良い個体なのでしょう。
8月の頭ですからまだ花があってもよいのですが、歩ける範囲ではそういう株は見当たりませんでした。個体数が多い種ではなさそうです。果実はかなり熟してきた段階の様子でやや歪んだ袋状の蒴果がはっきりとして来ています。ヨツバシオガマでも平標山の個体群は他の山塊のものとは性質が異なる部分があるのかもしれません。果実も写真で見る範囲では北アルプス辺りのものとは微妙に違っています。