朝起きてみると、和宮様が「大変じゃあー。やられたのじゃー」とこわごわと窓の外を挿す。廊下の窓から指先のほうを見ると、緑の雑草群落のなかにくっきりと泥の空間があった。かつても同じ場所をやられているので同じ犯人なのだろうか。裏山にイノシシが降臨なさったのだ。
寝室と現場とは4~5mくらいしか離れていない。昨夜か明け方か、まったく掘り上げる音を確認していない。現場に行ってみると、掘られた場所は2か所だった。以前は危うく石垣を崩される寸前だったことがある。ここ数日、出るはずのイノシシの痕跡がないので安心していたのだった。掘られた形状は「ぬた場」のような大きさだった。
すぐに対策にとりかかる。石垣のある近くにはとりあえず砕石をまき、石垣崩壊の補強もどきをする。そこへ、U字型のペグに匂いのキツイ衣類防虫剤を台所排水口用ネットでくるんで埋め込む。この防虫剤は畑の柵でも取り付けているので、イノシシが侵入しないことがわかっていた。
このペグを2mくらいの間隔で石垣近くに打っておく。これはなんとも1時間前に思いついたものだ。もちろんその前に、草刈りもしたが。裏山の上の方には狼藉をしないでわざわざ人間の近くで暴れるとは、これは挑発としか考えられない。さあ、この対策でイノシシはこれをどう判断して次の戦略をとるのか、攻防はすでに始まっている。