原題:『Bullet to the Head』
監督:ウォルター・ヒル
脚本:ウォルター・ヒル/アレサンドロ・キャモン
撮影:ロイド・エイハーン
出演:シルヴェスター・スタローン/サン・カン/サラ・シャヒ/アドウェール・アキノエ=アグバエ
2012年/アメリカ
物語の座りの悪さについて
この物語の時代設定がいつなのか分かる人がいるだろうか。携帯電話から推測するならば主人公の一人であるテイラー・クォンが動画まで撮れるスマートフォンを使っているのだから最近の話のようにも見えるが、テイラーから連絡を受けるレブレトン警部補は黒い固定電話を使っている。さらに不思議なことはジミー・ボボが使っている携帯電話がアンテナを伸ばすタイプのもので、これで時代設定が分からなくなるのである。
ところでニューオリンズを牛耳っているらしいロバート・モレルが東洋人たちと商談している中で話題にされたハリケーン・カトリーナがルイジアナ州ニューオリンズを襲った日は、2005年の8月で、その後の話となると2005年12月くらいになるように思う。
座りが悪いのは時代設定だけではなくて、例えば、殺し屋のキーガンがジミー・ボノモと相方のルイス・ブランシャールを襲う時に、ジャックナイフを用いることで、その後キーガンが敵のアジトに乗り込んで派手に銃をぶっぱなして、原題通りに「頭に銃弾」を撃ち込んで殲滅させるシーンを見るならば、最初から銃を使用すればジミーも殺せたはずである。
その際、キーガンはベビー・ジャックから、モレルが不正を働いていた証拠となる紙ファイルを取り戻したのであるが、モレルの弁護士であるマーカス・バプテストはモレルの資金源をフラッシュメモリで所有している。
このように一つの物語の中に相容れないアイテムが混入している原因は、世代が違う人物が共同で脚本を執筆したからだと思われる。
面白いことはクライマックスにおいて、ジミーを演じているシルヴェスター・スタローンが銃を置いて、体を張ってキーガンと戦うところで、『ラストスタンド』(キム・ジウン監督 2013年)のアーノルド・シュワルツェネッガーと同様に、いわゆる‘肉体派’の俳優はまだ自分は衰えていないというところをアピールしたがるものなのだろう。