MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『キャスト・アウェイ』

2013-06-15 23:55:29 | goo映画レビュー

原題:『Cast Away』
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ウィリアム・ブロイルズ・ジュニア
撮影:ドン・バージェス
出演:トム・ハンクス/ヘレン・ハント/ニック・サーシー/ジェニファー・ルイス/クリス・ノース
2000年/アメリカ

時間概念の変化について

 運送会社フェデックスで管理職の立場に就いている主人公のチャック・ノーランドは職業柄のせいなのか病的と言えるほどに時間厳守を従業員にも求めており、それは自国民のみならず、‘お国柄’など関係なかった。そのような性格のノーランドが、問題が発生したマレーシアに向かうために自社の貨物機に同乗中に、嵐による墜落事故に巻き込まれ、奇跡的に無傷で生き残ることができたのであるが、南太平洋の無人島に一人で約4年間取り残されることになる。
 それまで効率よく時間を使っていたノーランドにとっては火を起こすだけでも大変な時間と身体的ダメージを伴う労力を使うことになるだけでも我慢ならなかっただろうし、孤独な4年間で人生観が変わってしまうことは容易に察しがつく。特に、自家製の筏を作って無人島からの自力での脱出を試み、運良く大型貨物船に発見され帰国したものの、既に自分は死んだものと見なされ、婚約者だったケリー・フレアーズが歯科医と結婚し、子供までいたことを知った時、「何故そんなに急いだんだ」と自分のことを棚に上げて憤慨したに違いない。
 ノーランドはやり残していた仕事を果たすために、小包を届ける。あいにくそこの住人は不在だったために、ノーランドは感謝の意を伝えるメッセージを残して家を後にする。十字路で行き先を思案していたところにクルマが通りかかり、女性が降りてきて、それぞれの道の向かう先を教えて、先ほどノーランドが訪れた家の方へ向かってクルマで去っていく。彼女のクルマを見送りながら、それでもノーランドはもはや昔のように急ぐこともなく、相変わらず周囲を見回しながら、自分が書いたメッセージを見た彼女が戻ってくることを期待しつつ待っているのであるが、作品の冒頭で、彼女がフェデックスで送った小包をロシアで受け取った彼女の夫に愛人といるところを目撃してしまっている観客は、ノーランドと彼女とのハッピーエンドを確信することになるのである。
 エンドクレジットにはドアーズの「ハートに火をつけて(Light My Fire)」が最後の曲として載っているのであるが、何故か聞こえてこない。


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フランシスコの知性

2013-06-15 00:18:42 | Weblog

法王「出世主義はハンセン病」 WHO特別大使が遺憾表明(産経新聞) - goo ニュース

 英紙のカトリック・ヘラルドによると、3月に就任したローマ法王フランシスコは、今月6日、

バチカン市国で行われた教皇庁スタッフらの育成機関「教皇庁聖職者アカデミー」の演説に

おいて、出世主義をハンセン病に例えて批判し、内面の自由を得ることや教会の果たす

役割の重要性を説いたらしい。これはただ単にハンセン病に対する偏見だけの問題では

ないと思う。出世にがめついことが“見た目に悪い”という比喩としてハンセン病が選ばれた

わけなのだが、出世のための“政治活動”で時間を取られて内面を磨けないという意味なら

ともかく、“内面の自由を得ることや教会の果たす役割の重要性”と見た目の悪さは

相反するものではないのだから、これはハンセン病の問題以前にレトリックというものを

解していないフランシスコが抱える知性の深刻な問題なのである。


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