原題:『Cast Away』
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ウィリアム・ブロイルズ・ジュニア
撮影:ドン・バージェス
出演:トム・ハンクス/ヘレン・ハント/ニック・サーシー/ジェニファー・ルイス/クリス・ノース
2000年/アメリカ
時間概念の変化について
運送会社フェデックスで管理職の立場に就いている主人公のチャック・ノーランドは職業柄のせいなのか病的と言えるほどに時間厳守を従業員にも求めており、それは自国民のみならず、‘お国柄’など関係なかった。そのような性格のノーランドが、問題が発生したマレーシアに向かうために自社の貨物機に同乗中に、嵐による墜落事故に巻き込まれ、奇跡的に無傷で生き残ることができたのであるが、南太平洋の無人島に一人で約4年間取り残されることになる。
それまで効率よく時間を使っていたノーランドにとっては火を起こすだけでも大変な時間と身体的ダメージを伴う労力を使うことになるだけでも我慢ならなかっただろうし、孤独な4年間で人生観が変わってしまうことは容易に察しがつく。特に、自家製の筏を作って無人島からの自力での脱出を試み、運良く大型貨物船に発見され帰国したものの、既に自分は死んだものと見なされ、婚約者だったケリー・フレアーズが歯科医と結婚し、子供までいたことを知った時、「何故そんなに急いだんだ」と自分のことを棚に上げて憤慨したに違いない。
ノーランドはやり残していた仕事を果たすために、小包を届ける。あいにくそこの住人は不在だったために、ノーランドは感謝の意を伝えるメッセージを残して家を後にする。十字路で行き先を思案していたところにクルマが通りかかり、女性が降りてきて、それぞれの道の向かう先を教えて、先ほどノーランドが訪れた家の方へ向かってクルマで去っていく。彼女のクルマを見送りながら、それでもノーランドはもはや昔のように急ぐこともなく、相変わらず周囲を見回しながら、自分が書いたメッセージを見た彼女が戻ってくることを期待しつつ待っているのであるが、作品の冒頭で、彼女がフェデックスで送った小包をロシアで受け取った彼女の夫に愛人といるところを目撃してしまっている観客は、ノーランドと彼女とのハッピーエンドを確信することになるのである。
エンドクレジットにはドアーズの「ハートに火をつけて(Light My Fire)」が最後の曲として載っているのであるが、何故か聞こえてこない。