原題:『天空の蜂』
監督:堤幸彦
脚本:楠野一郎
撮影:唐沢悟
出演:江口洋介/本木雅弘/仲間由紀恵/綾野剛/光石研/佐藤二朗/石橋蓮司/國村隼/柄本明
2015年/日本
メインテーマを微妙にすり替えてしまう意図について
大作の「感じ」はよく出ていると思う。例えば、犯人の一人である雑賀と福井県警刑事の関根の組んず解れつのバトルは『野良犬』(黒澤明監督 1949年)の村上刑事と遊佐の取っ組み合いを彷彿とさせるし、ラストのヘリコプターの墜落シーンは『ブラック・サンデー』(ジョン・フランケンハイマー監督 1977年)のクライマックスを想起させる。
しかしストーリーそのものはツッコミ所が満載で、例えば、主人公の湯原一彰は息子の恵太が生まれる時に仕事の都合で立ち会えなかったことに深く後悔し、後悔し過ぎて9歳の息子との関係をこじらせてしまっているのであるが、世間が「イクメン」と騒ぎ出したのはここ5、6年のことで1995年頃ならば仕事で男が出産に立ち会えないことなど当たり前だったと思うから、そんなに気にしなくていいよ。
些細なことは無視できるとしても、テーマのブレはどうしたものだろうか。私の見間違えでなければ本作は原子力発電所の是非を争点にしていたはずであるが、ラストは何故か自衛隊のヘリコプターで〆てしまう。そのために本作のテーマは原子力発電所の安全性の問題ではなく、自衛隊用の超巨大ヘリコプター「ビッグB(Big Bee =大きな蜂)」の安全性の問題へと変わってしまっているのである。私の興味はこのテーマの微妙な変更があくまでも監督の狙いなのか、あるいは全国で上映するに際して何らかの支障が生じるために配給会社や製作委員会などとの話し合いで原子力発電所というメインテーマをマイルドに施した結果なのかということである。