東京国立近代美術館では現在ドイツの写真家の『トーマス・ルフ展』が催されている。トーマス・ルフ
(Thomas Ruff)の作品の特徴は個々の作品にある訳ではなく、一つのコンセプトの下に「組写真」
として提示するところにあると思う。例えば、下の組写真は新聞社から提供されたプレス写真から
写真の裏に書かれているキャプションも一緒に表に写した「press++」という作品である。
あるいは逆に新聞の記事を除けた写真だけで組写真とした「ニュースペーパー・フォト」の
ような作品もあり、かつて警察でモンタージュ写真を作るために使われた画像合成機を使った
「アザ―・ポートレイト」や、マン・レイが試みた「レイヨグラフ」のような「フォトグラム」、
「ソラリゼーション」のような「ネガティブ」という作品もあり、ネットから収集した写真を
加工した「ヌード」や「基層」など、いずれも最新の画像処理ソフトを使っているために洗練された
作品になっている。「jpeg」は現代の印象派でさえある。要するにトーマス・ルフはあらゆる
手段を駆使して写真の歴史を「渉猟」して作品を生み出しており、トーマス・ルフの後に写真の
新しい可能性はもはや存在しないように思う。