MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『白い帽子の女』

2016-09-29 00:21:30 | goo映画レビュー

原題:『By the Sea』
監督:アンジェリーナ・ジョリー・ピット
脚本:アンジェリーナ・ジョリー・ピット
撮影:クリスティアン・ベルガー
出演:ブラッド・ピット/アンジェリーナ・ジョリー・ピット/メルヴィル・プポー/メラニー・ロラン
2015年/アメリカ

 夢想家の夫と現実主義者の妻の違いについて

 主人公のアメリカ人の作家のローランドとかつてダンサーとして活躍していた妻のヴァネッサは、例えば、サングラスの置き方でさえ正反対であるほど備えている価値観が違っている。だから2人で滞在している南フランスのリゾートホテルの隣室の新婚のカップルの様子を覗くことに対する思いも違っている。
 下心を持ちながらローランドは自分が隣室を覗いている最中にヴァネッサが隣の部屋に滞在している夫のフランソワに会いに行ったことに激怒する。ローランドの、妻に対する反応は常識的なものではあろう。しかしヴァネッサが何故「覗き」という行為をしていたのか勘案するならば、フランソワとレアという若いカップルにかつての自分たちを重ねてヴァネッサは「観て」いたはずで、フランソワに会いに行った理由も、その「若き頃」に戻りたいという願望によるものだったのであろう。ここにはフランスの小説家のアラン・ロブ=グリエ(Alain Robbe-Grillet)の小説『嫉妬(La Jalousie)』(1957年)の影響が感じられなくはない。
 ホテルに滞在中にローランドは『By the Sea(海辺にて)』という小説を書きあげる。ローランドは毎日漁に向かう小舟を「たゆたう」自分たち自身に重ねて表現するのであるが、ヴァネッサは毎日漁に出るのに収穫がほとんど無いまま、それでも満足そうに帰って来る漁師を小バカにしている。夢想家の男と現実主義者の女の違いが浮き彫りになる理由は、やはり子供を産むのは女性だからかもしれない。
 それにしてもセルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)の音楽の威力は凄い。アメリカ映画なのにフランス映画にしか見えなかった。


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