現在、東京国立近代美術館で催されている『アジアにめざめたら(Awakenings Art in Society 1960s - 1990s)』を観ながら、マルセル・デュシャンの「レディ・メイド(Ready-made)」を思い出している。
デュシャンはもちろん意図してはいなかったであろうが、例えば、シンガポールの作家であるタン・ダウ(Tang Da Wu)の『彼らは犀を密猟し、角を切ってこのドリンクを作った(They Poach the Rhino, Chop Off His Horn and Make This)』(1989年)は薬を作るために犀が密猟されていることを問題提起しているのであるが、中央に置かれた犀は紙張子(Papier mâché)で制作され、犀の周囲を取り囲む薬のビンは犀のロゴが入った既製のものであり、アジア圏のアートは「反西洋」とでもいうかのように紙という耐久性に乏しい素材やビンなどの既製品で構成されており、これは結果的にはデュシャンの「レディ・メイド」、更にはアッサンブラージュ(Assemblage)の方法論を受け継いでいるように見えるのである。