原題:『Visages Villages』 英題:『Faces Places』
監督:アニエス・ヴァルダ/JR
脚本:アニエス・ヴァルダ/JR
撮影:ロマン・ル・ボニエ/クレア・ドゥグエ/二コラ・グシェテオ/ヴァレンティン・ヴィネ
ラファエル・ミネソタ
出演:アニエス・ヴァルダ/JR
2017年/フランス
盟友による解釈について
まずはタイトルに関して。原題は「それぞれの顔、それぞれの村」、英題は「それぞれの顔、それぞれの場所」でどちらとも韻を踏んで秀逸なタイトルである。一方、日本語のタイトルはジャン=リュック・ゴダールを含む6人のヌーヴェルヴァーグ世代の映画監督によるオムニバス映画『パリところどころ(Paris vu par...)』(1965年)から来ている。
巨大な倉庫や石やコンテナなどに現地の人々やヴァルダ自身のそれに見合った巨大なポートレート写真を印刷して回りながらヴァルダとJRはヴァルダの友人だったアンリ・カルティエ=ブレッソン(Henri Cartier-Bresson)と彼の妻が眠るモンジュスタンの墓地を訪れた後、JRはカルティエ=ブレッソンの「Behind the Gare Saint-Lazare」に写るジャンプする男の真似をする。その後ヴァルダはかつて自身が撮った映画『5時から7時までのクレオ(Cléo de 5 à 7)』(1962年)に出演してもらったゴダールと連絡を取り、会う約束をする。
ゴダールの映画『はなればなれに(Bande à part)』(1964年)内のシーンのようにヴァルダが乗った車椅子をJRが押してルーブル美術館を走り抜けた後、2人はゴダールの家を訪れるのだが、ゴダールは不在だった。
お土産として買っていたパンをドアノブに引っかけてメッセージを書き残してから、失意のうちの湖畔の椅子に腰かけるヴァルダをJRが慰めて、JRはヴァルダが望むようにサングラスを取って目を見せるのだが、画面ではぼかされている。
本作でヴァルダが何を言いたいのか勘案するならば、そもそも相方のJRが若きゴダールのように見えるし、彼らが作ったアート作品は「異化効果」を、アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真は「即興」を表すのだが、その「核心」となるゴダール本人は謎に包まれたままいうストーリーの流れはヴァルダ流のゴダール解釈のように見えるのである。