MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『銃』

2019-01-02 00:25:43 | goo映画レビュー

原題:『The Gun』
監督:武正晴
脚本:武正晴/宍戸英紀
撮影:西村博光
出演:村上虹郎/広瀬アリス/日南響子/新垣里沙/岡山天音/中村有志/リリー・フランキー
2018年/日本

一発の銃弾が持つ重みについて

 高島平のアパートに住む主人公で大学生の西川トオルは、ある雨の日、自殺者のそばに拳銃を見つけてそのまま持ち帰ってしまう。トオルは実の母親に捨てられたトラウマを持ち、養父母に育てられて大学まで通えるようになっていたのだが、チェーンスモーカーでどこか自分に自信が持てない欠落部分を拳銃で埋めようと目論んだのである。
 やがて夜中に瀕死の猫を見つけたトオルは猫を楽にさせようと所持していた拳銃で2発撃って逃げたのだが、トオルが逃走するところをたまたま見たコンビニの店員の通報で刑事がトオルのアパートにやって来る。喫茶店で話し合う中で刑事は拳銃を捨てるだけでいいと言い残して去っていくのだが、それこそが刑事がテーブルに残していったタバコの銘柄の「HOPE」が暗示するようにトオルにとっての最後の希望だったのであろう。
 まるでクロード・シャブロル監督作品の『いとこ同志』(1959年)を観るようなスリリングさを感じるものの、『いとこ同志』ほどラストがすっきりしない。ネタバレになるために詳細は避けるとしても、トオルが事前に銃弾を一つ抜いた動機が不鮮明で、最後に「ジタバタ」したいだけだったからではないのかと勘繰ってしまうためで、動機は物語に組み込んでおくべきではないのだろうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする