原題:『正体』
監督:藤井道人
脚本:藤井道人/小寺和久
撮影:川上智之
出演:横浜流星/吉岡里帆/森本慎太郎/山田杏奈/前田公輝/西田尚美/山中崇/宇野祥平/駿河太郎/木野花/田中哲司/原日出子/松重豊/山田孝之
2024年/日本
「精確」の重要性について
主人公の鏑木慶一を演じた横浜流星の熱演は高く評価されるべきではあるものの、本作のテーマである「18歳の犯罪」と「冤罪」を勘案するならば「精確」に欠けていると言わざるを得ない。一家惨殺事件の現場にたまたま居合わせた当時高校三年生の鏑木は生存者の井尾由子の証言で犯人とされるのであるが、あれほどの血だまりの中で真犯人の痕跡が全くなかったというのは不自然で、尚且つ事件のトラウマで精神的に不安定な井尾由子の証言がいとも簡単に採用されてしまうのは鏑木慶一でなくても納得はできないであろう。
この話に説得力をもたせるとするならば、警察の中に鏑木を犯人に陥れる悪意が存在しなければ成り立たないと思うのだが、そういう話にはなっていない。映像の完成度が高いだけにもったいないと思った。