原題:『麻雀放浪記2020』
監督:白石和彌
脚本:佐藤佐吉/渡部亮平/白石和彌
撮影:馬場元
出演:斎藤工/もも/ベッキー/的場浩司/ピエール瀧/吉澤健/堀内正美/小松政夫/竹中直人
2019年/日本
最近の殉愛記や放浪記の傾向について
1945年に麻雀のばくち打ちだった主人公の坊や哲が落雷により2020年の日本にタイムスリップするというストーリー展開なのだが、坊や哲が昭和哲というキャラクターに扮してフンドシを身につけることで一躍時の人となるなど観ているうちに、これは完全にスベっているのではないかと感じてしまう。そもそも2020年にわざわざタイムスリップしてくるのだから現代の日本に対するアイロニーを描きたいのだろうが、2020年3月3日に「終戦」したらしく東京オリンピックの代わりに世界麻雀選手権をしようと企んでいるらしい日本政府に与する警察官が個人情報を瞬時に呼び出せるヘッドセットを着用しているにもかかわらず何故マイナンバーを持っていない坊や哲を逮捕せず、坊や哲を世間にのさばらせているのか疑問が拭えない。
クライマックスにおける再度の落雷で1945年のタイムスリップ直前に戻って来た坊や哲は再び元の場所に戻って同じメンバーと麻雀を始めるのであるが、結局、坊や哲がタイムスリップできたのは彼が持っていたウーピンに仕掛けがあったのかどうかはともかく、何が言いたいのかが最後まで分からないまま、それぞれの特異なキャラを全く活かしきれていなかったように思う。ピエール瀧の問題以前の問題が本作にはある。