原題:『多十郎殉愛記』
監督:中島貞夫
脚本:中島貞夫/谷慶子
撮影:朝倉義人
出演:高良健吾/多部未華子/木村了/三島ゆり子/栗塚旭/山本千尋/永瀬正敏/寺島進
2019年/日本
「愛」が足りない「殉愛記」について
作品冒頭で「伊藤大輔監督の霊に捧ぐ」というタイトルを掲げており、明らかに自らハードルを上げているのだが、「殺陣の魅力を存分に見てもらうこと」をコンセプトにCGに頼らずに制作しているという意図は理解できるとしても、切られても着物が切れることはなく、もちろん血が噴き出すわけでもないのだからチャンバラごっこをしているようにしか見えない。特にクライマックスにおける主人公の清川多十郎と溝口蔵人の一騎打ちの呆気なさは、多十郎がおとよと弟の清川数馬を逃がすために敢えて犠牲になったという伏線でも補えず「殺陣の魅力」よりも「殺陣の雑さ」しか見当たらないし、冒頭だけに現れた桂小五郎は結局何だったのかという疑問ばかりが湧いてくる。