MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ハード・コア』

2019-01-21 00:52:02 | goo映画レビュー

原題:『ハード・コア』
監督:山下敦弘
脚本:向井康介
撮影:高木風太
出演:山田孝之/佐藤健/荒川良々/石橋けい/首くくり栲象/康すおん/松たか子
2018年/日本

「完」という文字の使い方について

 主人公の権藤右近は金城銀次郎が主宰する極左政治結社に所属しており仲間の牛山と埋蔵金探しのために山奥で穴を掘っているのだが、右近の弟の権藤左近は優秀な商社マンとして海外に出張するなど忙しい生活を送っている。
 ある日、牛山が人が死んだと泣きながらやって来て、右近が現場に駆け付けると倒れていた古びたレトロなロボットが自分自身で動きだして、「3人」で活動することになるのだが、このロボットが意外と役にたたない。埋蔵金の在りかは当てたものの、金城の直属の部下だった水沼が金城を殺害した後に、死体が入れられたカバンの中に金城が入れられていることに右近も牛山も気がつかない。ロボットは気がついたのだが、水沼に言いくるめられて2人に知らせなかったのである。
 日本の近海を漂流していた船の船内で殺人が起こったというニュースをテレビで見た右近は左近が埋蔵金の取引に失敗したと誤解したりすることからも分かるように「3人」は収入のみならず情報処理に関しても「貧困層」に属しており、結局、警察官に囲まれた左近と牛山を担いでロボットは飛び立って空の果てで爆発してしまうのだが、それは特撮テレビドラマ『ジャイアントロボ』のラストシーンを彷彿させる。
 その後、埋蔵金の取り引きを無事に終えて帰国してきた左近が、かつて右近たちがいて今は誰もいないアジトを歩き回って「完」の文字が出る。昔のATG映画のように本当はこれで終わらせたかったのであろうが、今は「蛇足」を加えなければならないところが「スタイル」に厳しい映画制作の現状といったところだろうが、最近では『来る』(中島哲也監督 2018年)のように上手くいった例はある。


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『来る』

2019-01-20 00:56:40 | goo映画レビュー

原題:『来る』
監督:中島哲也
脚本:中島哲也/岩井秀人/門間宣裕
撮影:岡村良憲
出演:岡田准一/黒木華/小松菜奈/青木崇高/柴田理恵/太賀/松たか子/妻夫木聡
2018年/日本

理解しにくいホラー映画の難解さの原因について

 主人公の田原秀樹が香奈と結婚して子供ができたのは2016年の1月頃であろう。秀樹は友人たちを呼んで盛大なパーティーをし、さらに「イクメン」のブログを開設して幸せな様子をアピールしているのであるが、実際は世間体を良く見せるだけで育児に関して何もしようとはせず香奈は育児に悩んでいた。
 そんな時、秀樹の部下の高梨が謎の死を遂げるのだが、娘の知紗は無事に生まれた。しかし二年後、田原家の住むマンションに異変が起こったことから秀樹は親友で民俗学者の津田大吾を介してオカルトライターの野崎和浩と霊能者の比嘉真琴を紹介してもらう。真琴は早々に秀樹と津田のうさん臭さを見破るのであるが、だからと言ってこの「事象」を防ぐことはできず、やがて全国から霊媒師を募って2018年12月24日に凄惨な戦いが繰り広げられる。
 本作が理解しにくいのは超常現象の原因となっているはずの知紗が飽くまでも普通の娘として描かれていることで、ラストで知紗が「オムライスの国」の夢を見ている理由は、本当の幸せとは、例えば、ブログなどで幸せをアピールするような外面の良さのことではなく、内面から湧き出てくるものだからであろう。個人的には本作は『ローズマリーの赤ちゃん』(ロマン・ポランスキー監督 1968年)の翻案だと思う。


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『へレディタリー/継承』

2019-01-19 00:55:18 | goo映画レビュー

原題:『Hereditary』
監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
出演:トニ・コレット/アレックス・ウルフ/ミリー・シャピロ/ガブリエル・バーン
2018年/アメリカ

映画のジャンルとの相性について

 「アリ・アスター監督の『へレディタリー』は気味が悪く、それでも人の注意を捉えて離さない、直近50年のホラー映画の中の最高傑作のように感じさせる(Ari Aster‘s “Hereditary” is just that movie – a spooky, hypnotic film that feels like the culmination of the last 50 years of horror)」、「『へレディタリー』はジェニファー・ケント監督の『ババドック~暗闇の魔物~』同様に今のところ国内における21世紀最高のホラー映画を連想させた(Hereditary reminded me also of Jennifer Kent’s The Babadook, the only other domestic horror movie so far in the 21st century truly on the same level)」と映画批評家から絶賛されている。確かに観客を怖がらせる描写はそれなりに見応えはあるものの、ラストのオチはキツネにつままれたようなものだった。窓を破って身を投げて自殺した兄のスティーブ・グラハムの身体に死んだはずの妹のチャーリーが乗り移ったように見えたのだが、スティーブが庭にある小屋に昇っていくと信者のような者たちがスティーブを崇拝するようにして物語が終わり、全てはカルト教団の仕業だということはわかる。
 だから何なのかということを描かなければならないはずなのだが、続編はなさそうで、母親のアニーが制作していたミニチュア模型も活かしきれず、『クワイエット・プレイス』(ジョン・クラシンスキー監督 2018年)と並ぶほどの愚作としか言いようがないのだが、それともホラー映画と相性が悪いのだろうか。


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『クリード 炎の宿敵』

2019-01-18 00:38:21 | goo映画レビュー

原題:『Creed II』
監督:スティーヴン・ケープル・Jr.
脚本:シルヴェスター・スタローン/チェオ・ホダリ・コーカー
撮影:クレイマー・モーゲンソー
出演:マイケル・B・ジョーダン/シルヴェスター・スタローン/テッサ・トンプソン/ウッド・ハリス
2018年/アメリカ

「体の中核のブレ」を解消させる対照性について

 前作『クリード チャンプを継ぐ男』(ライアン・クーグラー監督 2015年)はボクシングの試合を見せる作品だったように思うが、本作はボクシングよりもヒューマンドラマに重点が置かれているように思う。
 主人公のアドニス・クリードには恋人のビアンカ・テイラーがおり、ビアンカは耳が不自由な女性で、結婚してすぐに娘のアマーラが生まれるのであるが、アマーラも耳が不自由なのである。アドニスは一度はロッキー・バルボアと袂を分かち父の仇であるイワン・ドラゴの息子のヴィクターと世界ヘヴィー級タイトルマッチはヴィクターの反則負けで辛うじてアドニスは防衛する。
 アドニスが抱えるこの「体の中核のブレ」がストーリーに影をおとすのであるが、興味深いのは前半でロッキーが2002年に亡くなった妻のエイドリアンの墓を見舞い、アドニスが家庭を持つことと対照的に、ラストにおいてロッキーは疎遠だった息子のロバートと孫のローガンに会いに行き、アドニスは父親のアポロの墓を見舞うところで、この対照性によってアドニスが抱える「体の中核のブレ」が解消されるように感じるのである。
 『クリード』シリーズは『ロッキー』シリーズのスピンオフという以上の作品のクオリティーを感じさせる。


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『この道』

2019-01-17 00:39:44 | goo映画レビュー

原題:『この道』
監督:佐々部清
脚本:坂口理子
撮影:朝倉義人
出演:大森南朋/AKIRA/貫地谷しほり/松本若菜/津田寛治/柳沢慎吾/羽田美智子/松重豊
2018年/日本

作品が「映画」にならない映画製作会社について

 作品冒頭で描かれる北原白秋が作詞した「あめふり」の経緯や、北原が島崎藤村の『若菜集』を愛読していたところなど、一応要所は押さえているのかもしれなとしても、北原は松本若菜が演じた松下俊子と離婚後、貫地谷が演じた佐藤菊子と結婚する前に詩人の江口章子と結婚しているはずなのだが、何故か江口は本作に登場しない。
 戦争に関しても北原といい北原の相棒として描かれる作曲家の山田耕筰といい、本作に描かれているように反戦だったのかどうか怪しい。戦意高揚のために仕方がなく軍歌を作ったように描かれているのであるが、北原は「万歳ヒットラー・ユーゲント」という詩を書いており、山田は「戦争協力」で多数の軍歌を作ったと指摘されているからである。
 坂口理子の脚本にそもそもそれほど期待してはいなかったが、史実を曲解するのはよくないと思うし、映画というよりもテレビドラマのような感じで、せいぜい映画としてのスリリングさといえば子供による「アドリブ」の部分くらいで、童謡をモチーフにしただけのことはあるのかもしれないのだが、それはベテランの映画監督の佐々部清の頑張りによるものであろう。


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「Separate Tables」 Vic Damone 和訳

2019-01-16 00:54:07 | 洋楽歌詞和訳

Separate Tables 1958 Song

 ヴィック・ダモーン(Vic Damone)が歌う「銘々のテーブル(Separate Tables)」は

1958年に公開された映画『旅路(Separate Tables)』(デルバート・マン監督)の

メインテーマである。以下、和訳。

「Separate Tables」 Vic Damone 日本語訳

銘々のテーブル
孤独な2人がそれぞれのテーブルについている
2人は室内の真向いに座っている
彼らがくつろぐにはとても近いようでかなり遠い
僕には彼が彼女にとても興味があることはわかるのだが
彼は彼女に胸の内を知られることを恐れている

銘々のテーブル
2人は別々のテーブルに座るつもりはなかった
もしも彼が僕が君を愛するほどに彼女を愛しているならば
彼らがどのように行動するのか僕には確信がある
彼らは2人専用の銘々のテーブルを見つけるんだ

だから彼が僕が君を愛するほどに彼女を愛しているならば
彼らがどのように行動するのか僕には確信がある
彼らは2人専用の銘々のテーブルを見つけるんだ


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『アストラル・アブノーマル鈴木さん』

2019-01-15 00:06:32 | goo映画レビュー

原題:『アストラル・アブノーマル鈴木さん』
監督:大野大輔
脚本:大野大輔
撮影:道川昭如
出演:松本穂香/西山繭子/田中偉登/広山詞葉/谷のばら/大沼遼平/加藤啓/根矢涼香
2017年/日本

オリジナルの「予告編」としての編集版について

 主人公の鈴木ララが群馬のド田舎で「わたぬきゼミナール」の塾講師の傍らでYouTuberとして起死回生を目論む理由は母親でシングルマザーの久美子と引きこもりの弟の流留男(ルルオ)を残して東京で人気女優として活躍している双子の妹のリリに対する対抗意識があったからであろうが、実際に湿気取りで溜まった水を飲もうとするなど色々と試してみても視聴者は2000人程度で、わざわざ「引退会見」を催すために塾の一室を有料で借りて、司会者まで五千円で雇ってみても来たのは自分が嫌いだったファンだけなのである。
 ところがリリは芸能プロモーターとできちゃった結婚をすることになり、本社がある福岡に引っ越すと言いだして、それまでのリリの努力、というよりも残されていた家族の忍耐は何だったのかということで大喧嘩をしてしまう。
 そんな時、「倫理」を教えていた望月が自分が作った歌を動画にアップしたいから手伝って欲しいと相談を受けて、ララは気軽に引き受けるのであるが、「メディアは嘘つく生き物だ」と諭していた望月のギターの演奏と歌と楽曲の完成度の高さに度肝を抜かれ、同時に自分の無力を思い知らされ号泣してしまう。
 プロとして活躍するようになった望月から手紙をもらったララは塾講師として落ち着いた生活を送っており、部屋に籠っていたルルオは部屋から庭に出て花に水をやるくらいまでになっている。
 YouTube配信版から編集されたためにぎこちない部分はあるものの、主人公を演じた松本穂香のポテンシャルの高さに関しては十分に堪能できるのではあるが、果たしてファンが本当に見たい「松本さん」だっただろうか?


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島田秀平の占いの実力

2019-01-14 23:37:24 | Weblog

NGT48「Whatcha Gonna Do」MUSIC VIDEO Short ver. / NGT48[公式]

指原莉乃が山口真帆の暴行問題で報道陣に「全てそのまま記事に」異例のお願い
指原莉乃が運営へ異例の苦言、NGT48山口真帆騒動受け決断
柏木由紀、NGT山口真帆の謝罪に「何も出来なかった自分が情けない」
NGT48中井りか、山口真帆の暴行被害事件に言及 「憶測だけで騒ぐな」怒りあらわに
NGT48中井りか、山口真帆事件めぐる憶測に怒り「名誉毀損」「それこそ罪」
中井りか、NGT暴行騒動に言及「叩いてる奴ら全員それこそ罪」
NGT中井りか「メンバー全員を信じたい」 生放送で騒動言及
NGT48「山口真帆」暴行事件、スタッフの“情報統制”に騙されたスポーツ紙
NGT支配人が異動で退任、山口真帆暴行事件で責任
AKS松村取締役「(秋元氏は)大変憂慮」一問一答

 実はここで言いたいことは山口真帆や指原莉乃のことではなく、占い芸人の島田秀平のことであるのだが、中井りかは今回の事件に関して偉そうなことは言えないと思う。NGT48を「会いに行けるアイドル」ではなく「ヤレるアイドル」というイメージを付けてしまったのは去年スキャンダルを起こした中井りかと、そんな中井に対してなまヌルいペナルティーでうやむやにしてしまったNGT48の運営の責任だからである。岡田奈々が言うのであるならばその発言には重みがあろうが、中井には今回の件に関してあれこれ言う権利はないし、グループの運営責任者に当たるNGT48劇場の今村悦朗支配人の「異動」というペナルティーも甘いとしか言いようがない。
 ところで島田は日テレ系の『AKBINGO!』という番組で毎年初めに「ラッキーガールランキング」という企画で48グループの手相を見てその年の彼女たちの運勢を占っているのであるが、山口に関しては2018年は283人中93位、2019年は280人中149位で、要するに全然当たっていないのである。島田が本当の実力を発揮しなければならないのはこういう事象を予言することにあるはずで、良い事よりも身の危険を事前に知らせてあげられないのならば占いの意味はないと思うのだが、280人を一気に見なければならない島田の立場も気の毒ではある。


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「MacArthur Park」 Richard Harris 和訳

2019-01-13 00:56:15 | 洋楽歌詞和訳

小柳ゆき「MacArthur Park」(Music Video)

 「マッカーサー・パーク」のオリジナルは1968年にリリースされたリチャード・ハリス(Richard Harris)で、有名なカヴァーヴァージョンは1978年にリリースされたドナ・サマー(Donna Summer)のものだが、小柳ゆきのヴァージョンも素晴らしいと思う。以下、和訳。

「MacArthur Park」 Richard Harris 日本語訳

春は全く僕たちを待ってはくれなかった
一足先に走って行ってしまった
僕たちが踊りながら後を追うと
まるで一対のストライプ柄のズボンとして
愛で酷く熱せられた鉄のような
開かれた本を閉じるように両側からプレスされた

マッカーサー・パークが暗闇の中に溶け込んでいく
甘い緑色の糖衣が全て流れ落ちている
誰かが雨降る中にそのケーキを置いて行ったんだ
僕がそれを手に取れるとは思えない
だってそれを焼くためには長い時間がかかったはずだし
もう僕がそのケーキのレシピを入手することはありえないのだから

僕は君が膝をついている周囲の
波のように泡立つ黄色いコットンドレスを思い出す
君の手にはいたいけな赤ん坊のような鳥たち
そして老人たちは木のそばでチェスをしている

マッカーサー・パークが暗闇の中に溶け込んでいく
甘い緑色の糖衣が全て流れ落ちている
誰かが雨降る中にそのケーキを置いて行ったんだ
僕がそれを手に取れるとは思えない
だってそれを焼くためには長い時間がかかったはずだし
もう僕がそのケーキのレシピを入手することはありえないのだから

僕が歌えるように僕のために別の歌があるはず
僕のために別の夢があって
誰かが持ってきてくれるだろう
僕は温かい内にワインを飲むよ
絶対に君に捕まらないようにするよ
太陽を見ながら
僕の人生において全ての恋人が去った後
僕の人生において全ての恋人が去った後
君がいるはずなんだ

僕は自分の手で自分の人生を掴んで
活用したい
僕は名声を彼らに見せられるだろうか
僕は敗北するかもしれないし
自分の欲しいものを手に入れられるかもしれない
僕の情熱は空を架ける河のように流れる
僕の人生において全ての恋人が去った後
僕の人生において全ての恋人が去った後
何故か僕は君のことを想っているだろう

マッカーサー・パークが暗闇の中に溶け込んでいく
甘い緑色の糖衣が全て流れ落ちている
誰かが雨降る中にそのケーキを置いて行ったんだ
僕がそれを手に取れるとは思えない
だってそれを焼くためには長い時間がかかったはずだし
もう僕がそのケーキのレシピを入手することはありえないのだから

 この歌詞に出てくる「ケーキ」とは「僕」が「彼女」に作ってもらったものと捉えていいと思う。別れてしまったためにケーキを置いてきてレシピも手に入れられないのであろう。このケーキとはもちろん2人のかつての「蜜月の時期」を暗示しているはずである。

Donna Summer - MacArthur Park (from VH1 Presents Live & More Encore!)


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「Et Moi Dans Mon Coin」 Charles Aznavour 和訳

2019-01-12 00:57:31 | フレンチポップ

08 charles aznavour Et Moi Dans Mon Coin

 シャルル・アズナヴールの「そして私は一人片隅で」を偶然聴いて良い曲だと思ったので

以下、和訳してみる。

「Et Moi Dans Mon Coin」 Charles Aznavour 日本語訳

彼が君を横目づかいで観察している
肘掛け椅子に座っている君はいらだっている
彼は君を目の奥で愛撫している
君は自ら彼の企みになすがままにされている

そして私は一人片隅で
全てのことに気がつきながら
私は何も言わずにいる
そして私は一人片隅で
終わりが来るまでじっと我慢している

彼は君を夢中で愛撫する
君は微笑みを浮かべながら
彼を受け入れる
彼は君を脅かすだろう
それは私にはわかっている
私が彼ではないことに
君は後悔するだろう

そして私は一人片隅で
君の駆け引きの仕方を知りながら
私は何も言わずにいる
そして私は一人片隅で
私を締め付けるこの苦悩を
細心の注意を払って隠す

彼は君をさりげなく見つめているし
君はあっけらかんと何でも喋る
彼は私を介して君に言い寄る
大笑いしながら
君は自分自身に陶酔する

そして私は一人片隅で
心は涙の岸に浸かりながら
私は何も言わずにいる
そして私は一人片隅で
悲しみを飲み込む
愛が別の所有者の手に移るから


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