澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「公務員バッシング」の果てに…

2007年11月18日 20時53分31秒 | マスメディア
今日の「産経新聞」に興味深い記事が載っている。元外務官僚の宮家邦彦氏が書いた「”国のため”気概失う若手官僚」という記事だ。
それによれば、東大法学部出身の国家公務員採用者が、過去15年で140人から60人へと激減しているという。10年前までは東大法学部の各年上位100人はほどんどが国家公務員になるといわれた。しかし、現在の上位100人の多くは外資系企業や弁護士などに流れ、公務員は皆無に近いそうだ。

こうなった原因は、最近の公務員バッシングにあるようだ。宮家氏は次のように続ける。
「理由は何であれ、東大法学部で最も優秀な若き”エリートたち”が国のために働く意欲を失っているのだとすれば、実に由々しき事態ではなかろうか」
「大多数の若い国家公務員は薄給にもめげず、国民のために黙々と働いている。朝は早くから各政党の部会に呼ばれ、昼間は通常の業務をこなし、夜は国会関連作業
などで遅くまで待機する。
国民が真に憂慮すべきは、官僚組織の政策立案能力の低下であろう。…問題解決には日本の長期的な国益を踏まえたプロの専門家集団による真剣な政策議論が必要である。…政治主導の政策決定には大賛成だが、最近の行き過ぎた役人バッシングだけでは何も解決しない。現在のように国会議員が政争に明け暮れ、民間にシンクタンクが育たないまま、官僚たたきだけがあと10年続けば、どうなるか。
日本の官僚組織は確実に崩壊し、責任を持って長期的政策を立案できる組織はなくなるのだ。」

最近のマスコミによる「役人バッシング」は、キャリア公務員の「ノブレスオブリージュ」(高貴なる義務)まで否定する傾向にある。「民間ならこうだ…」という論調で、公務員の非効率性を攻撃するのが常套手段だが、「民間とは何を指すのか」「公務員の公共性・公平性をどう考えるのか」という視点は欠落したままだ。
上記の記事が指摘するように、あと10年こんな状態が続けば、日本の官僚制度は確実に崩壊するだろう。

問題は霞ヶ関の中央官庁だけではない。身近な市役所や郵便局の職員は、これまでごく普通の人々が勤める安定した職業だった。輝く学歴や技能がなくても、こつこつと日々の仕事をこなしてきた。これらの人たちが、地方・地域を支えてきた側面は誰も否定できないはずだ。それを「税金泥棒」呼ばわりして、貶めるという最近の風潮は本当に見苦しい。
名もない普通の、これらの人々が、日本の社会階層からごっそりと抜け落ちた時、日本社会はどう変わるのか?
その答えはもうはっきりとしている。弱肉強食の「格差社会」の普遍化だ。