4月26日(月)、台湾協会主催による酒井充子氏の講演会が、東京・日比谷の「糖業会館」※で開かれた。酒井充子(あつこ)氏は、ドキュメンタリー映画「台湾人生」の監督。この映画は、昨年来、全国各地の小規模映画館で上映され、静かなブームとなっていた。先月にはこの映画のDVDが、さらに今月上旬には、文藝春秋社から単行本「台湾人生」が発売されたので、これからも多くの人々の注目を集めることだろう。
※ http://8918.teacup.com/abeng035/bbs/563
(酒井充子監督)
私が最初に酒井充子監督をお見かけしたのは、昨年7月4日、映画「台湾人生」上映後におこなわれた蕭錦文(しょう きんぶん)氏とのトーク。蕭錦文氏はこの映画に登場する一人で、台湾の日本語世代に属する台湾人。台北「二二八紀念館」で解説員をしている。私も彼の解説によって台湾の歴史に目を開かせられた一人だ。
このとき、酒井監督が高齢で台北からやって来た蕭錦文氏を気遣っていたのが印象的だった。
酒井充子監督、蕭錦文氏とのトーク~映画「台湾人生」上映後 2009.7.4
今回は、2時間に及ぶ本格的な講演会だった。蔡明亮監督の映画「愛情万歳」との出会い、さらに九份(きゅうふん)で偶然出会った日本語世代の老人との会話が、酒井氏の台湾との出会いだった。北海道新聞記者という安定した地位を投げ捨て、映画製作の道に突き進んだ行動力に私は驚嘆する。人生の中で何度か「飛び立とう」と思ったものの、実行に移せなかった私とは、鮮やかな対極だ。
講演の中で興味深い話をいくつも聞いた。映画「台湾人生」の観客動員数は、およそ1万人だという。台湾映画「海角七号」が(台湾で)230万人とされているから、数字的には思いのほか少ない。ただし、上述のようにDVDが発売され、単行本も上梓されたので、これからの浸透を期待したい。
「台湾人生」に登場する陳清香さんについては、お子さんをカナダに留学させ、カナダ国籍を取得させたと聞く。これは、台湾の将来を危惧する台湾人知識層に多く見られる傾向で、民進党を応援し台湾独立を願っている陳さんでも、こういう”保険”を家族には科しているのだ。
最後に、質疑応答でNHKの話題が出た。2月だったと思うが、中(あたり)孝介が「金曜バラエティ」という生番組に出演して「野バラ」を歌ったのだが、中(あたり)には「最近、野バラを歌う機会がありまして…」としか発言させず、映画「海角七号」のことは一言も触れさせなかった。
中孝介が歌う「野バラ」~司会者は中孝介に「海角七号」を語らせなかった~
酒井監督は、この指摘を受けて苦笑いをされていた。媚中報道を続けるNHKは、酒井監督の「台湾人生」も決して取り上げようとはしない。
酒井充子という生き方の清々しさを感じた2時間だった。