何年も開けない書棚に、父が残してくれたアルバムを手に取った。
傷んだアルバムの見返しに墨書された父の一文を目で追った。
”俊彦アルバムのはじめに題す 成長して齢満7才に達す 成長の跡を省みて天地の恵みに感謝
家族の慈愛に思慕の思いを致す折あらばと念じ 恙なく育まれかしと願う
やがてこの一巻にこよなく幼少のころをなつかしみ成人の暁にまたとない贈り物となるならん。”と。
開いた1ページ目には、学帽をかぶりランドセルを背負った凛々しい姿が写っている。
続いて、数々のセピア色の写真が糊付けされている。
皆、まぼろしのごとき遙かなる思い出だ。
そして、アルバムの裏の見返しには
”とし坊君!あなたはうれしいにつけ悲しいにつけアルバムの頁をめくって「とし坊ちゃん」と呼ばれ過ぎ去った幼い日を偲ぶだろう。”と。
目を瞑ると、父や母、そして兄、妹の顔が浮かび、涙が溢れた。