エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

なつかしい青春の心を知る

2010-04-04 | 文芸
                 【沈丁花ほころぶ】

 何気なく、本棚の「岡潔 春宵十話」を手に取った。
 興味ある内容で、ちっぽけな人間が青春の一時期に出会った大切な本だ。
緑色に縁取られた箱入りの本を開くと、40年も前に引いたアンダーライン、そしてその横にメモが走り書きされていた。
自然について、教育について、生き方について・・・、青春の心の一端が記されていた。
すでにあまりに長い月日が経ってしまった。

アンダーライン個所をたどり、メモの一部分に目をやり、懐かしい日々を浮かべながら再読した。
○人の中心は情緒である。情緒は民族の違いによっていろいろな色調がある。
たとえば春の野にさまざまな色どりの草花があるようなものである。
○情緒の中心が発育を支配するのではないか、とりわけ情緒を養う教育は何より大事に考えねばならないのではないか、と思われる。
○その人たるゆえんはどこにあるのか。私は一にこれは人間の思いやりの感情にあると思う。
○よく人から数学をやっていて何になるのかと聞かれるが、私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。
○数学のもとも良い道づれは芸術である

以下は「岡潔 春宵十話」の内容目次。
【春宵十話 (人の情緒と教育、情緒が頭をつくる、数学の思い出、数学への踏み切り、フランス留学と親友、発見の鋭い喜び、宗教と数学、
学を楽しむ、情操と智力の光、自然に従う);宗教について;日本人と直観;日本的情緒;無差別智;私の受けた道義教育;絵画教育について;
一番心配なこと;顔と動物性;三河島惨事と教育;義務教育私話;数学を志す人に;数学と芸術;音楽のこと;好きな芸術家;女性を描いた文学者;
奈良の良さ;相撲・野球;新春放談;ある想像;中谷宇吉郎さんを思う;吉川英治さんのこと;わが師わが友】  
 
「あとがき」の余白全面に、若き日の、鉛筆の走り書きがあった。
【 大学生活の6年間が終わる。その間、僕の周りにはいつも大いなる自然が存在した。
このことは何にも勝る幸せだった。大自然に眺め入るとき、すべてを忘れてしまう。
眼に映る姿はあまりに素晴らしく、それらを享受したことが涙流れるほど嬉しい。
 緑と土と光のにおいがする。チョウを求め入る山道に大自然の匂いがする。
北海道への一人旅もそうであった。自分は恵まれた大自然の中に真の姿を捕まえた。
大自然に向かいペンを執る。夜空を見上げ聞いてみた。幸せの何か。人生の何かを。崇高なる対話なり、対大自然なれば。
自然に育てられた自分を、これからも忘れてはならない。
これからのあわただしい生活の中にもそんな自分を見失いたくない。
理想は現実の中にありそれらは相関連するもの、夢見ることをやめたときに、青春は終わる。
いつまでも心は大きく。生命は不思議だ、宇宙は不思議だ。人間としての人生だ。勉強しなければ。格物致知!。】

 在りし日の思いを想像した。 
 拙い文章、考えだが、とても純真に思えた。
 長い間忘れていた本に、なつかしい青春の心を見つけることができた。
  

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大切な本 (山形のM.O)
2010-04-04 09:53:06
御誕生日おめでとうございました。
お孫さんとともに地元の自然や歴史を散歩するのが、とても素敵な「情緒を養う」時間なのですね。将来のお手本にさせていただきたいと思っております。


本棚を整理する時、限られたスペースだから取捨選択を繰り返してきました。その中で、所定の位置をキープし続けた本は、自分の精神の大黒柱になっているようです。初心を忘れそうな時やなにかを決断する時などに、ゆっくり手にとって捲ります。
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大切な本 (会津マッチャン)
2010-04-05 08:07:48
誕生日、元気で迎えられて
素直にめでたいと思います。
ありがとうございます。
昨日は庭に出ていたためでしょう、鼻がむずむず、目が痒い花粉症の症状です。
今朝は雨降り、ゆっくり窓越しに眺め手過ごします。
物置1つが書庫になり、宝が数十年も眠ったままです。ときどき覗いてみます。
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