今朝は新日曜美術館(NHK教育)を見るつもりでいたが、うっかり見逃してしまった。「染織家志村ふくみの半世紀・虹色のいのちをつなぐ」だ。
夜、スキーのジャンプのliveを見ていて、再放送に気づいて途中からなんとか見ることができた。ときどきスキーに切り替えての細切れの視聴となった。ジャンプ団体は3位に入り銅メダルを獲得できた。ついつい応援してしまった。
志村ふくみを知ったのは中学校の教科書(光村図書出版『国語2』)からだった。それは大岡信「言葉の力」だ。彼はそこで志村ふくみさんのことを例に挙げて、言葉と人間との関わりや美しい言葉、正しい言葉について書いていた。彼の短い文章に感動した覚えがある。
その後、志村ふくみさんの著書「一色一生」を買い求めた。その序文を大岡信が書いている。
「「一色一生」と言う本の中で、一人の染織作家とその思索に出会うと同時に、一回限りこの世に生きると言うことの意味そのものに出会うのである。それは<一色一生>を通じて、不思議にも<多生一色>が奥深いところから姿を顕現させてくる人生の秘密に出会うことでもあるだろう。・・・」
私もかつて草木染めに興味を持ちいろいろ染めてみたことがある。授業・「課題研究」で生徒と研究したことを思い出す。
川俣の染織家・山根正平先生のところに数日通っていろいろ教えて頂いたこともあった。もう20年も前になるか。そのときは、桜の木から絹のスカーフを染めた。草木染めは、媒染の金属やpHによって色が変わる。生徒との研究で、桜の場合は、確かアルカリやクロムで媒染すると桜の花びらのような淡いピンクになった。また、妻が長い間使っている絹のスカーフは、いつか私がタマネギの皮を使って染めたもの。それはミョウバンで媒染したあざやかな黄色でとてもきれいだ。
化学染料でなく天然の色であることが何とも言えない魅力だ。番組でも、志村さんが工房でかせ糸を藍染めするシーンが出てきた。そのとき、藍瓶から出した糸の緑色が一瞬のうちに青に変わる。この現象を志村さんはこころで見ていた。
私も何度も経験したが、緑がかった還元色から、空気に触れて藍色に変わる不思議な色の変化は何とも言えなかった。この化学変化を化学理論で片付けることは味気ない。草木染めは、自然や歴史、伝統、文化等とのつながり、人間の心の通った対象としての温かさを持っているのだ。
これからも折を見て草木染めを楽しんでみたいと思った。(2007.2.25)
**** NHKの番組紹介 ****
【人間国宝・染織家の志村ふくみさんは82歳になった今もなお、新たな創作に取り組み続けている。これまで自分で糸を染め、織ってきた布の端切れをパッチワークのように縫い合わせ、軽やかで自由な世界を生み出している。志村さんの創作の根底にあるのは、自ら手を下した植物への弔いだ。植物の命を糸と織りに、そしてそれを身に着ける人にまでつなげていくのだという強い思いで作品に取り組んできた。自然と響き合う生き方とはどういうことなのか。司会の檀ふみと野村正育アナウンサーが志村さんの工房を訪ね、珠玉の言葉を聞く。】
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