明治42年11月13日大阪朝日新聞
○ 日本醤油の処分如何
薩可林(サッカリン)のかどを以って封印差押えられた日本醤油の処分に関し警察部において二説あり、ひとつはサッカリン含有が希薄であるならば有害でなく故に現在混入している醤油に対して新たに他の醤油を混入しサッカリンが科学的に反応を起こさない程度に希薄すれば衛生上何の危害がないようにすれば廃棄処分を命ずるに及ばずといえる。もう一つは例え希薄にしても衛生上無害といえどもサッカリンの混入していることが明白なるものは法律命令に照らし純然たる不正品であるので程度の如何によらず廃棄せしむるものである。いわんや人工甘味質取締規則には量の多少に関係なく絶対に使用を禁止している物である。両説もそれぞれ理由があるために未だ不正醤油の処分を断行すること出来ず。従って日本醤油会社は新規販売を差し止められこのままむなしく日子を経過している。醤油醸造を中止している有様なのでこれはひとり衛生警察上の問題にとどまらず約2万石の醤油を廃棄し、かつ今後日本醤油醸造会社をほろぼすことは経済上及び国家の収入にも多少の影響あることなので大阪税務監督局にては二三日前局員を派遣して実地調査して事実警察部の試験に相違がないのを確かめたもののその処分に関して別に1説あって、すなわち科学的反応が出ないほどに希釈すれば分析技術上サッカリンの存在を証明することが出来ず当然自由に販売して差し支えはなく、かつ科学反応なきまで希薄することによって、衛生上有害物となることはできず、しかも経済上価値ある醤油を無意味に廃棄することは国家経済上の損失を招くことになるという議論となった、これはかってホルマリン混入の酒について警察部と協議して同様の処分をした前例があったと言える。
○ 日本醤油の処分如何
薩可林(サッカリン)のかどを以って封印差押えられた日本醤油の処分に関し警察部において二説あり、ひとつはサッカリン含有が希薄であるならば有害でなく故に現在混入している醤油に対して新たに他の醤油を混入しサッカリンが科学的に反応を起こさない程度に希薄すれば衛生上何の危害がないようにすれば廃棄処分を命ずるに及ばずといえる。もう一つは例え希薄にしても衛生上無害といえどもサッカリンの混入していることが明白なるものは法律命令に照らし純然たる不正品であるので程度の如何によらず廃棄せしむるものである。いわんや人工甘味質取締規則には量の多少に関係なく絶対に使用を禁止している物である。両説もそれぞれ理由があるために未だ不正醤油の処分を断行すること出来ず。従って日本醤油会社は新規販売を差し止められこのままむなしく日子を経過している。醤油醸造を中止している有様なのでこれはひとり衛生警察上の問題にとどまらず約2万石の醤油を廃棄し、かつ今後日本醤油醸造会社をほろぼすことは経済上及び国家の収入にも多少の影響あることなので大阪税務監督局にては二三日前局員を派遣して実地調査して事実警察部の試験に相違がないのを確かめたもののその処分に関して別に1説あって、すなわち科学的反応が出ないほどに希釈すれば分析技術上サッカリンの存在を証明することが出来ず当然自由に販売して差し支えはなく、かつ科学反応なきまで希薄することによって、衛生上有害物となることはできず、しかも経済上価値ある醤油を無意味に廃棄することは国家経済上の損失を招くことになるという議論となった、これはかってホルマリン混入の酒について警察部と協議して同様の処分をした前例があったと言える。