明治42年11月14日大阪朝日新聞
○飲食物の危険
所長会議のため来阪の内務省衛生試験所技師田原薬学博士を13日大阪衛生試験所に訪ねて飲食物に関する談話を聞いた。
▲飲食物と公徳
最近、醤油中にサッカリンを発見したところから、サッカリンの有害無害について種種な説もあるようだがそんなことは詮議だてをする必要はない。人間の生命をつなぐ飲食物は純良なるが上に純良なるものを選ぶようにせねばならぬ。全体が染め粉で色を付けてサッカリンで甘味を付けたようなものは例え無害であっても栄養上何の効果もないから、贋造物(にせもの)というのが至当であって現にロシアなどでは国内でサッカリンの製造を禁止している。日本の政府が禁止したのは単に公衆衛生上から見て当を得た話で禁を破っても使用する者が多い今日で公然と許すとなればすべての物に乱用して始末に終えぬ。ようは商人の公徳如何ににもよるが競争が激しくなればなるほど贋造物が出やすいからやはり厳重に取締る外はない。
▲飲食物科学者
欧州には飲食物科学者というものがある。その者は薬剤師と同じように綿密な試験を受けて飲食物巡視員に採用され絶えず巡視しているから滅多に怪しいものは販売されない。また、衛生試験所も至る所にあって個人が使用せんとする飲食物の試験を願って出るものや商人の販売品を試験しこれに証明を与える。されば商人は自家商品の価値を保つために進んで試験所の監督を受けるようにしている。スキさえあれば不正手段を用いようとする日本商人はとても差が大きくて同じ扱いはできない。
▲硫黄で燻べた飴
しかるにアメリカになるとこうはいかない。現に先年日本の養老飴よりも透明な飴がアメリカから輸入された。菓子屋はこれを西洋菓子の原料にするため争って購入したが良く調べてみると硫黄で薫べて晒したものである。硫黄は人体に有害であるから早速使用禁止したが。チョッと油断するとこういう風な危険な飲食物が出るから今後衛生取締の上には更に厳密なる手段をとるようにせねばならぬ。
養老飴とは今のゼリー菓子の原型。
明治時代後期に東三河・(愛知県)田原町の鈴木菊次郎がオブラートを発明し、さつまいものでんぷんから水あめが作られたことから、豊橋ではこの2つを利用したゼリー菓子の生産が発達しました。その原型は「養老飴」と呼ばれた。養老飴は寒天・砂糖・水あめから作られる。
内務省衛生試験所技師田原薬学博士はこの事件の前の年「味の素」の無害の証明書を発行している。味の素の創始者鈴木三郎助の食に関する販売政策は今でも先進性がある。すでに当時サッカリンの取締りが盛んに行なわれており、政府の税収のために取締っていたのは明白であったため、予め無害の証明を取る必要があった。
○飲食物の危険
所長会議のため来阪の内務省衛生試験所技師田原薬学博士を13日大阪衛生試験所に訪ねて飲食物に関する談話を聞いた。
▲飲食物と公徳
最近、醤油中にサッカリンを発見したところから、サッカリンの有害無害について種種な説もあるようだがそんなことは詮議だてをする必要はない。人間の生命をつなぐ飲食物は純良なるが上に純良なるものを選ぶようにせねばならぬ。全体が染め粉で色を付けてサッカリンで甘味を付けたようなものは例え無害であっても栄養上何の効果もないから、贋造物(にせもの)というのが至当であって現にロシアなどでは国内でサッカリンの製造を禁止している。日本の政府が禁止したのは単に公衆衛生上から見て当を得た話で禁を破っても使用する者が多い今日で公然と許すとなればすべての物に乱用して始末に終えぬ。ようは商人の公徳如何ににもよるが競争が激しくなればなるほど贋造物が出やすいからやはり厳重に取締る外はない。
▲飲食物科学者
欧州には飲食物科学者というものがある。その者は薬剤師と同じように綿密な試験を受けて飲食物巡視員に採用され絶えず巡視しているから滅多に怪しいものは販売されない。また、衛生試験所も至る所にあって個人が使用せんとする飲食物の試験を願って出るものや商人の販売品を試験しこれに証明を与える。されば商人は自家商品の価値を保つために進んで試験所の監督を受けるようにしている。スキさえあれば不正手段を用いようとする日本商人はとても差が大きくて同じ扱いはできない。
▲硫黄で燻べた飴
しかるにアメリカになるとこうはいかない。現に先年日本の養老飴よりも透明な飴がアメリカから輸入された。菓子屋はこれを西洋菓子の原料にするため争って購入したが良く調べてみると硫黄で薫べて晒したものである。硫黄は人体に有害であるから早速使用禁止したが。チョッと油断するとこういう風な危険な飲食物が出るから今後衛生取締の上には更に厳密なる手段をとるようにせねばならぬ。
養老飴とは今のゼリー菓子の原型。
明治時代後期に東三河・(愛知県)田原町の鈴木菊次郎がオブラートを発明し、さつまいものでんぷんから水あめが作られたことから、豊橋ではこの2つを利用したゼリー菓子の生産が発達しました。その原型は「養老飴」と呼ばれた。養老飴は寒天・砂糖・水あめから作られる。
内務省衛生試験所技師田原薬学博士はこの事件の前の年「味の素」の無害の証明書を発行している。味の素の創始者鈴木三郎助の食に関する販売政策は今でも先進性がある。すでに当時サッカリンの取締りが盛んに行なわれており、政府の税収のために取締っていたのは明白であったため、予め無害の証明を取る必要があった。