年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

明治42年11月19日大阪朝日新聞

2007年03月18日 | 福神漬
明治42年11月19日大阪朝日新聞
▲希薄処分で済ます意向
昨紙東京電話により日本醤油の処分に対する内務省の方針は結局危害無き程度に於いて相当処分を命ずることに決定。その旨大阪兵庫の両府県知事に向かって通知したる旨記載して於いたが18日安東防疫事務官が神戸及び高知へペスト予防の用件にて出張の途、大阪警察本部に立ち寄り、内務省における意見が右の如く決定したる詳細を伝えし模様であるが何分結末が結末であるので府当局者は「安東防疫官は所管外の異なれば一向取り止めたる意見も無かった」云々と綺麗に逃げ内務省への思惑をはばかり明白なる答えをなさずされど実際は希薄して販売を許すというに相違ない。当局者の一部には内務省の腰の弱さ憤慨し、今後飲食物の取締は到底理想通りにはいかぬとつぶやいていた。中にこれを解説するものが例え希薄にして販売を許すにしても甘精(サッカリン)が検出せぬ程度まで希薄にせんとすれば純良品十石にサッカリン入り醤油一石より混ぜることできず、会社が押収品は一万石以上あるので今後十万石以上の純良なる醤油を製造する事が出来るのだろうかどうか云々と。かくて喧しかった醤油事件は愈々竜頭蛇尾に終わろうとする。
 このような記事を書いたところ神戸より電報があり、安東防疫事務官は元町旅館に休憩中訪問した記者に向かって「法文上は醤油事件の処分は地方長官に一任しているので中央政府は軽々しく干渉せざる方針である。同社は宜しく自ら公衆に危害を与えぬ方法を講ずべく地方長官はその方法を講ずるや否やを待ってしかる後処分するを穏当と思う。不正であるからといって疾風迅雷の如く急拠に処分すれば法の精神に反するだけでなく、また極めて不親切な行為と信じていて何しろ今回の事件は犬が犬糞にぶつかった感がある」云々とかっかと大笑いして語った。

安東防疫事務官は当時神戸で流行していたペスト対策のために来ていた。神戸の患者は一月以後229名の患者が出ていた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする