十四日に東寺の五重塔を見に行った。バスを降り境内に入って先ず皆で写真を撮った。五重塔を背景に入れると逆光になっていたが旅の主催者が二度程シャッターを切った。フラッシュが光って顔を過った感じがあったから、きっと上手く写っているだろう。旅の記念の写真はそれ一枚きりだから楽しみにしている。そしてボランティアの学生が五重塔の由緒の説明をしてくれた。私は学生の説明もそこそこに内部へ入って柱や構造に圧倒されながら素晴らしさに我を忘れた。次の建物に入ると今度は木彫の仏像が立ち塞がるように迫ってきた。理屈ではなく目に見える形で表されてはじめて仏のありがたさが分かったような気がした。伽藍を巡るうちに、沢山の人が道沿いに並んでいるのに気付いた。これは一体なんだろう。きっと何かを待っている、と思った。家内がそばにいるご夫人に声をかけると、「いい日に来られましたね。今日は“ごしちにちみしほ”の結願の日で宮内庁より天皇陛下の御衣を奉持した勅使が参向され、道場へ焼香参拝されます。」と説明してくれました。後で貰った説明書を読むと、八百三十五年(承和ニ年)弘法大師が宮中で正月八日から十四日までの七日間修法されたのが始まりで、明治の混乱を経て同十八年から東寺で行なわれるようになったそうだ。鎮護国家、五穀成就、国土豊饒を祈願する。天皇家は神事でのみ願いごとを行なうと思っていたが、仏事でも行なうとは初めて知った。矢張り天皇家は日本文花の要なのだ。軽々に論ずべきものではないのかも知れない。